1944-01-01から1年間の記事一覧

前山警備について(碁は死に目にもあわない)

毎日の日課は、朝夜明けとともに起床。一応分隊長が人員掌握、元気な者と病人に大別、食事当番を置き、農園手入れ、柵の補強。小生は火砲の手入れ二日に一回。以上作業時間1時間半。 其の後海岸井戸端へ洗面に行き、朝食となる。腹を空にして働きその後食事…

ウマカモン話

夕食後皆銃器の手入れ、入浴(ドラム缶)となる。その後毛布下3枚上一枚着て就寝となるが、空腹の時は眠れない。誰かが日本のウマカモンの話をすると、それを食った様に次の者が話す。名物、駅弁、郷土自慢話に話を咲かせる。長崎ちゃんぽん、カステラ、成…

前山の思い出  ネズミ取り

前山に来て一年も経つとネズミが炊事場荒らしにくる。芋その他食品をやられるので皆で相談したことがある。T木,N尾兵長の二人がネズミ取りを作って捕獲しそれを料理したら一石二鳥ではないかと発案した。捕獲器作り皆一所懸命であったが巧くゆかない。唯一…

土人の夜歩きについて

土人とは夜付き合ったことはなく諸用事は昼間であった。某日,本島のパンガマという大隊の歩哨位置を越えて食糧採集に行った時のことである。時間も遅くなり暗闇ではあるし,野宿することにし4人円くなり天幕を被って寝たことがある。夜中何か気配がする。一…

19年12月上旬

タロキナに上陸した米豪連合軍はその後も堂々と荷揚げ作業を続け,陣地構築中だという。エレベンター方面より,作戦に参加する当師団歩兵,その他の兵が通過する。中間には2500米以上の山あり,又川も雨毎に増水し激流となる。一応総攻撃をかけたが食糧もな…

19年11月下旬 分隊長N西軍曹の死

本島の方へ糧秣採集に行ってもなかなか集まらない。前島山砲も自活を強いられ,古い農園に芋の蔓植え(三ヶ月で食されるように太る)や豚の侵入を防ぐ柵の補強等毎日続ける兵も弱っている。又農園内に豚が荒らしに侵入してくる。総て夜のことであり不寝番も…

19年11月中旬 豚料理に満腹

殆どの分隊員が本島の方へ糧食集めに行く。 後に残ったのは小隊長,分隊長,U生上等兵他病人5名に小生の9名であった。小生も銃を握り前島ジャングル内に行く。何か居ないものかと歩き回っていると,草が30糎幅位に踏みにじられているのが続いている。豚の通…

19年11月11日

米海兵隊14000名ブーゲンビル島西側中央付近タロキナ岬へ突然上陸。 米豪軍のタロキナ上陸で土人の離反が多くなってくる。今まではよく来ていた土人も姿を見せない。日本軍に見切りを付けタロキナ方面へ移住したものか。亦今まで通り近寄ってくる土人につい…

19年10月 ヤドカリ漬製造

前島名産ガニ漬(有明海沿岸のシオマネキなどの小さいカニを潰した塩辛)はよく売れた。前島を半周廻ってもガニが見つからない程実によく売れたものだ。前島のソロモン海に面した外側は,荒波で岩が切り立ったようになっており,敵機からも発見されやすい状…

19年9月 パンの実取り

小隊農園と海岸椰子の間にパンの木の大きいのがあった。幹が大きく丈も高くて登って実を取ることも出来ない。要は朝早く薄暗い頃その木の下へ行き待っていると,蝙蝠がやって来てパンの実をつつく。すると熟した実は地面に落ちてくる。雑草の上だから汚れる…

19年8月 大隊給与係幕舎を襲う

分隊のN兵長が大隊の給与係として元中隊にいた。「初年兵が大隊の給与係として,自分等が大隊へ行っても威張り腐っている」という。すると皆「そうだ」「あいつ生意気だよ,なんとか泡吹かせてやれ」「そう言えばヤツの幕舎には乾パンが80箱以上あるよ」「…

19年7月 S田上等兵(島原市白土)の死

同じ島原市出身で顔見知りのS田上等兵は会えば必ず言う。「N田さんの店で松の緑,おこしをよく買ったものだが本当に美味しかった。塔にき(付近)の菓子屋といって島原でも大きな店で,慰問袋に入れて送ってもらいたいくらいだ。内地へ帰ったら島原の名物…

19年5月 S井兵長(佐賀市呉服町出身)の死。

吾々前島小隊より物々交換で喜ばれるものは生魚,ナマコ,塩魚,塩辛等である。吾々はよく中隊,大隊へ行き交換したものであった。大隊本部病院へ立ち寄った所,佐賀市のS井兵長が椰子葉で作った涼しそうな病舎に寝込んでいる。「どうした」と聞くと「マラ…

19年5月4日 内地の夢で元気が出る。

二日前よりマラリア熱発で寝たきりである。宿舎内は鬱陶しいので海岸に降り,椰子の木陰に横になっているうちに寝込んでしまった。その内夢となり母が仏壇に陰膳を供え,仏に参っている姿が出てくる。内地にいる頃兄が東京にいたので陰膳を供え,元気でいる…

 19年3月上旬 戦地での重営倉

6師団弾薬倉の衛兵に小生ら4名勤務した時である。交代直後馬に乗った将校が二人来たので小生「キエタ弾薬倉、警備中異常ありません」と報告。ところが一人の将校が馬から下り、手榴弾を積み上げた弾薬箱を2段3段4段目迄開いてみる。ところが手榴弾は一段…