19年5月4日 内地の夢で元気が出る。

 二日前よりマラリア熱発で寝たきりである。宿舎内は鬱陶しいので海岸に降り,椰子の木陰に横になっているうちに寝込んでしまった。その内夢となり母が仏壇に陰膳を供え,仏に参っている姿が出てくる。内地にいる頃兄が東京にいたので陰膳を供え,元気でいることを仏にお願いしていたことを思い出す。今私にも母が膳を供え仏にお祈りしているかと思うと,不思議にも元気が出てきた。空腹でへこたれるなと言っているのだろう。つい,ふらふらっと敵機もいないので汐の引いた珊瑚礁の浅瀬へ歩き出す。牡蠣の殻を銃剣でこそぎ割り口に入れる。二度三度口に持っている間に熱も引き,気分もすかっとした来た。