水の輸送

■ 水のリサイクル

 原発事故処理水が安全なら、放出せずに再利用すればいいという意見が韓国内にあるという紹介です。紹介だけで、ツイート主の意見はわかりませんが、もし再利用できるなら、下水処理場の処理水も再利用すればよいので渇水対策にもなってグッドアイデアです。しかし、そんな意見を言う人はいません。そんなことすれば、水道料金は一桁高くなってしまいますからね。

 似た意見に砂漠地帯に水を輸送して緑地にするというのがあります。残念ながら、石油と違って水の輸出や輸入は行われていません。輸送費が高すぎるからです。それは知っていましたが、どの程度なのか知りませんでした。そこで、今回、極めて大雑把な計算をしてみました。

■ 水の輸送料

 輸送手段は、タンクローリーで、輸送距離100kmの場合を計算します。タンクローリー容量は最大で30tだそうです。福塚運送株式会社という会社のサイトに「タンクローリー輸送費用の標準運賃を使った算出方法」が載っていました。「標準運賃」とは令和2年国土交通省告示 第575号で定められています。これを使った、タンクローリー輸送費用の計算式は、次の通りです。

  距離程運賃×特殊車両割増 + 高速代(往復) + 荷積・取卸料 (弊社届出 標準的な作業で各8,000円)

 まず、距離程運賃を告示の表から調べると、効率的に運べそうな一番大きな、トレーラー20tクラスで100km当たり5万円程度です。

 特殊車両割増については、福塚運送株式会社では、タンクローリーは車両価格・メンテナンス費用・片道運行・輸送量の不安等の諸条件を勘案して3~4割増が妥当としています。

 高速代は、往復200kmなので、特大車の2万円程度とします。

 以上より、 

5万円×1.3+2万円+8千円=9万円

 タンクローリー容量30tなので 3000円/t

となりました。

 

■ 水は高きから低きに流れる

 一方、水道料金の平均は、20tで3000円程度なので、150円/t です。

つまり、100km輸送するだけで、水道料金の20倍必要になります。砂漠に輸出するなんて論外です。

 ただ、流すだけなら、それほど費用は掛かりません。ローマ水道玉川上水が作られたのはそういう理由です。用水路を作るのもお金のかかる大土木事業ですが。水という重量物を輸送する費用に比べれば大したことはないわけです。

 下水処理場原発も海に近い標高の低いところに立地していますので、処理水は河川や海に放出するのが最も安上がりです。わざわざ人間が上流の浄水場まで運ぶより、太陽エネルギーによる自然循環に任せればすみます。

 とはいえ、海水の淡水化施設がいくつか建設されています。当然ながら海の近くなので、淡水化だけでなく、輸送費が馬鹿高くなります。それでも建設されるのは、渇水対策や離島という水の価値が極めて高い特殊な状況だからでしょう。一般的にはなりそうもありません。