デマではないが、ミスリード
ワクチン接種した時期に、超過死亡が増えている
ワクチン接種者の感染者が多い
この種のワクチンは危険だという言説は幾度となく繰り返されますね。前者は、接種が多い時期に超過死亡も増えているというだけで、接種が原因であることは何も示していませんし、後者は、接種者の人数が多ければ感染者も多いという当たり前のことを言っているだけです。これらは、事実ではありますが間違った結論にミスリードする目的で反ワクチン界隈から飽きもせず示されます。
その一方で、厚労省のデータも注意しないと読み誤る恐れがあるものがあります。例えば、2021年6月1日~2021年6月30日までの「HER-SYSデータに基づく報告」には、一つの表の中に、ワクチンが致死率を下げるようにも上げるようにも見えるものがあります。
この報告では、65歳以上、65歳未満のいずれも、未接種の致死率が1回接種者や2回接種者より大きくなっています。このことから、接種は致死率を減らしていると言ってしまうのは早とちりです。何故なら、条件が揃っていないからです。非常に健康状態の悪い人は接種できませんから、非接種者の方が元々不健康だったことを示しているだけかもしれません。それは65歳以上をみればなんとなく分かります。重病人の多い高齢者は元々、多くの人が亡くなっているはずで、そのような人は当然、接種できるような健康状態ではなかったでしょう。
さらに、一見、奇妙な現象が起きています。65歳以上と65歳未満の年齢別では、接種者の致死率が小さいのに、両方を合計した全年齢の1回接種者は未接種者より致死率が大きくなっています。反ワクチンが飛びつきそうですが、これはシンプソンのパラドクスとして知られている現象です。ワクチンはまず、高齢者から接種が始まりましたので、1回接種には高齢者多く、致死率が大きくなって当然です。未接種者の65歳以上は13%しかいないのに対して、1回接種者の65歳以上は71%にもなっています。
このように、条件がそろっていないことを隠せば、ワクチン有害説でもワクチン有効説でも、証拠っぽく見せかけることができます。これに対して、薬事承認にあたって行われる臨床試験では、条件を揃えた比較を行い、効果を確認するわけで、最も信頼性が高いと言えます。ただ、条件が揃っているか確認するのは、簡単なようで難しいです。年齢層が違うという単純な違いさえ見落としてしまうのですから、少し込み入ってくると隠れた要因に気づかず騙されてしまいます。