「コロナワクチン接種『時給最大18万円』」という記事と財務省資料

 全く知らなかったのですが、昨年5月にこんな記事がでていて、話題になっていたようです。

 

参考資料の『集団接種単価とコールセンター単価』を見て唖然としました。接種を担った医師の時給が書いてあるのですが、最小は3404円、平均で1万8884円。ところが、最大で17万9800円との記述があるのです。意見書も《一部、著しく高額になっている自治体もある》と指摘しています

 

smart-flash.jp

 

一方で、こんな記事もあります。

財務省政令市など105自治体を対象に、2022年度の接種1回あたりの単価を調べた。大規模会場で行う集団接種の平均単価は1万8240円で、個別接種と比べて約7900円も高かった。会場や人員を確保しても、集団接種の稼働率が平均で6割弱にとどまったことや、接種する医師に払った報酬が、平均で時給2万円を超えたことなどが要因だ。

 

www.yomiuri.co.jp

 

 こちらは、集団接種の接種1回あたりの単価は個別接種に比べて割高と財務省が指摘したという内容です。接種する医者の時給については記載がありません。FLASHの記事は何か勘違いしているのではないかと思い、財務省の資料を見てみました。財政制度等審議会の「歴史的転機における財政」という報告です。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20230529/04.pdf


 
勘違いではありませんでした。確かに医師の時給の最大値179,800円と書いてあります。ただし、平均値は18,884円、最小値は3,404です。この最大値は特殊な条件の異常値くさいです。そして、そう指摘している記事もありました。

 

医師の時給17万9800円の内訳は、都庁から1000キロ以上離れた小笠原諸島の住民へのワクチン接種や、東北地方の工場への職域ワクチン接種の「日当」を時給換算したにすぎない。

 

www.asagei.com


 小笠原諸島の接種の特殊な例だとしても、まだ釈然としません。時給17万9800円はどうにもとびぬけています。小笠原には船でしか行けず、船中2泊、島内3泊しなければなりません確かに費用が掛かります。といっても、旅行サイトで調べると、諸々の費用の合計は11から12万円程度です。平均的な集団接種の時給18,884円との差額16万円が、この12万円によるものだとすると、12/16=3/4時間の勤務しかしていないことになります。3泊して3/4時間勤務はどうも解せませんが、島内の接種者が1人だけならあり得ないでもありません。

 

 疑念はあるものの、接種に必要な正当な実費です。財務省は、離島住民は接種不要というのでしょうか、それとも、離島へ接種にいく費用は医師が負担すべきというのでしょうか。

 

 また、このような稀な特殊例を財務省が資料に示す理由もわかりません。冒頭の記事の見出しは「コロナで病院が大儲け」です。旅費や宿泊費は実費で病院の儲けにはなりませんが、病院が不当に大儲けしているとミスリードしたかったのでしょうか。奇妙なことに報告本文には、医師時給については言及がありません。何の為の資料だったのでしょうか。