曖昧な確率の問題

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問題1

見分けのつかない2枚のコインがあります。そのコインには表・裏があります。この2枚のコインを、見えないように両手でよく振って、布の下に2枚とも見えないように置きます。ここから1枚だけコインを取り出したところ、そのコインは表を向いていました。その後、布をめくったとき、布の下にあるもう1枚のコインが表を向いている確率はいくつでしょうか?

 

  上記の問題の答えは、1/3となっていますが、1/2です。過去に間違えた解説が多いという記事を書きましたが、その1例です。

shinzor.hatenablog.com

 この問題の場合は、次のように考えるべきです。

表を〇 裏を×とすると、2枚のコインA・Bの出方は以下の4通りで、総て同じ確率です。

  A〇B〇 A〇B× A×B〇 A×B×

 次に、この4通りから1枚のコインを取り出した時の可能性は以下の8通りで、同じ確率です。

  A〇B〇からA〇を取り出す

  A〇B〇からB〇を取り出す

  A〇B×からA〇を取り出す

  A〇B×からB×を取り出す

  A×B〇からA×を取り出す

  A×B〇からB〇を取り出す

  A×B×からA×を取り出す

  A×B×からB×を取り出す

 従って、表のコインを取り出した時に、もう1枚も表である確率は2/4=1/2です。

 では、1/3になるのはどのような場合でしょうか。おそらく、次の問題のような場合です。

 

問題2

見分けのつかない2枚のコインがあります。そのコインには表・裏があります。この2枚のコインを、見えないように両手でよく振って、布の下に2枚とも見えないように置きます。

別の人に布の下を確認してもらったら、「少なくとも1枚は表である」といいました。

その後、布をめくったとき、2枚とも表を向いている確率はいくつでしょうか?

 

 この場合は、2枚のコインA・Bの出方は以下の4通りで、同じ確率です。

  A〇B〇 A〇B× A×B〇 A×B×

 このうち、少なくとも1枚が表であるのは3通りで、2枚とも表は1通りです。従って、少なくとも1枚が表である時に、2枚とも表である確率は1/3です。

 

 と、このように、今までは、考えていました。しかし、疑念がでてきました。この問題は、曖昧なところがあるんです。別の人はどのようにして「少なくとも1枚は表である」と確認したのでしょうか。例えば、次の問題3の確認方法はどうでしょうか。

問題3

見分けのつかない2枚のコインがあります。そのコインには表・裏があります。この2枚のコインを、見えないように両手でよく振って、布の下に2枚とも見えないように置きます。別の人に1枚だけコインを取り出して確認してもらい向きを変えずに布の下に戻してもらいました。その人は「表だったので、少なくとも1枚は表だ」といいました。

その後、布をめくったとき、2枚とも表を向いている確率はいくつでしょうか?

 これは、実質的に問題1と同じなので、1/2でしょう。少なくとも1枚は表と確認できて、なおかつもう1枚も表である確率が1/3になるような確認方法はあるのでしょうか。

 少し、設定は違いますが、次はどうでしょうか。

問題4

隣に家族が越してきました。その家族のお母さんが挨拶にきて子供が二人いると言いました。その夜に、隣の家から女の子の声が聞こえてきたので、少なくとも一人は女の子だとわかりました。もう一人も女の子である確率はいくつでしょうか?

 この問題で声を聞いた女の子の考えられる可能性は次の4通りです。

  姉妹の姉、姉妹の妹、姉弟の姉、兄妹の妹

 もう一人も女の子であるケースは2通りなので、その確率は2/4=1/2です。残念ながら1/3になりませんでした。

 そこで、答えが1/3になるように無理やり考えたのが、次の問題です。

問題5

表裏共赤色のカードが1枚、表が赤で裏が青のカードが2枚、表裏共青のカードが1枚あります。このうち表裏共青のカードだけ厚くなっています。それを袋に入れて、1枚のカードを触ったら薄いカードでした。そのカードが両面赤である確率はいくつでしょうか?

 この場合は、明らかに4つの可能性が3つに絞られていて、そのうちの一つが両面赤ですので、1/3の確率になります。一方、問題3は、8つの可能性が4つに絞られ、そのうちの2つが両方表ですので、1/2の確率になります。問題2は、少なくとも1枚は表であることをどのようにして知ったのか書いてありませんので答えは分からないとしか言えないのではないでしょうか。

 このことは、多数回試行で考えると、分かり安くなります。問題1の2枚のコイン投げを400回行うと。A〇B〇、A〇B×、A×B〇、A×B×が100回ずつになります。2枚のうち1枚が〇になるのは、A〇B〇では、100回すべてで、A〇B×とA×B〇では、半分の50回で、A×B×では、0回です。従って、1枚が表だった場合にもう1枚も表である確率は、100/200=1/2です。

 問題5の場合は、カードを400回選ぶと、赤赤100回、赤青200回、青青100回になります。このうち、薄いカードは、赤赤と赤青の300回なので、薄いカードのうち赤赤の確率は、100/300=1/3です。

 つまり、「少なくとも1枚(一人)は表(赤、女の子)である。」だけでは、設定が曖昧で答えは分からないということだと思います。どのようにしてその情報を知ったのかで結果が変わります。もう少し具体的に言えば、コインAとBのセット(きょうだい、カード)についての情報なのか、1枚のコインの表裏(一人の子供の性別、カードの1面の色)についての情報なのかによります。確率の問題として考えると、その違いを意識しにくいので混乱するのだと思います。この違いを模式的に表したのが下図です。具体的な多数回試行で数え上げて考えようとすれば、違いを意識せざるを得ません。

 ところで、きょうだいの問題で答えが1/3になるのは、お母さんが「2人の子供がいて、少なくとも一人は女の子です。」と言った場合となっています。でも、この場合、具体的な多数回試行はどのようにするのでしょうか。私にはわかりません。なので、この問題の場合はまだ疑念が残っています。

 

【追記】

 最後の疑念は、多分解消しました。

お母さんは一組の2人きょうだいに対応して一人なので、模式図の1/3になる場合に当たるかと思います。

 多数回試行では、姉妹、姉弟、兄妹、兄弟のお母さんが100人ずついます。そのうち「少なくとも一人は女の子」と言うお母さんは300人なので、もう一人も女の子の確率は1/3です。

 問題2も「別の人」をお母さんの立場にすれば、1/3になります。具体的には、コインを2枚とも確認するということになります。ただ、問題にはそこまで書いてありません。