悩ましくない「眠り姫問題」

 ツイッターで、次の条件付き確率の問題を見かけました。

Aさんの家には子供が二人いる。男女の修正比率はそれぞれ1/2であるとする。次の確率を求めよ。

  • Aさんの子どもの一人が女の子であると聞かされたとき、もう一人の子どもも女の子である確率。
  • Aさんの第一子が女の子であると聞かされたとき、もう一人の子どもも女の子である確率。
  • Aさんの子どもの一人が火曜日に生まれた女の子であると聞かされたとき、もう一人の子どもも女の子である確率 

 問題文が雑ですが、程度の差はあれ確率の問題は、あいまいなところがありますね。同じ問題でも、違う意味に解釈されることが良くあります。あいまいではなくても、うっかりしていると重要な点を見逃してしまうことがあり、モンティホール問題がその代表です。司会者が偶然に外れのドアを開けたのか、選んで開けたのかで答えが違ってきます。

 そもそも確率のイメージが人によって違うようで、その結果、人によって見解が分かれます。そこで、確率という言葉を一切、使わないほうがよいのではないかと思いました。具体的にどうするかというと、ありうる事象をしらみつぶしに全部、数え上げて、単に事象の数の比率を計算せよと問うのです。

 

例題1二人の女の子の問題(1)

少なくとも一人が女の子である二人きょうだいのありうる男女の組み合わせパターン数(B)に対する、二人とも女の子であるパターン数(A)の比率は?

 

(解答)

 少なくとも一人が女の子である二人きょうだいのパターン数(B)は、姉・妹、姉・弟、兄・妹の3パターン。

 二人とも女の子のパターン数(A)は、姉・妹の1パターン。

 答え:1/3

 

例題2二人の女の子の問題(2)

女の子が自分は、二人きょうだいと言った。その兄弟のありうるパターン数(B)に対する二人とも女の子のパターン数の比率は?

 

 (B) は、もう一人女、もう一人男の2パターン。

 (A)は、 もう一人女の1パターン。

 答え:1/2

                                               

例題3 火曜日生まれの女の子の問題

少なくとも一人が火曜日生まれの女の子である二人きょうだいのパターン数(B)に対する、そのうち二人とも火曜日生まれの女の子である二人きょうだいのパターン数(A)の比率は?

 

 少し複雑なので、パターンを網羅した表を作成し、そこから(A)と(B)のパターンを数えます。

 下表より、(B)は、27パターン、(A)は、13パターン。

 答え:13/27

 

 

 続いて、なにかと見解が分かれる「眠り姫問題」も同じように変えてみます。

 

コインを投げ、表が出たら眠り姫は月曜に起こされ、火曜日は寝たままである。裏がでたら、月曜日と火曜日に起こされる。眠り姫が起きているパターン数(B)に対する起きていてコインが表であるパターン数(A)の比率は?

 

 最後の表より、(B)は、3、(A)は、1。答え:1/3

   

 どうでしょうか。明確ではないでしょうか。この問題形式の良いところは、眠り姫が記憶を失うという条件が不要なことです。コインの表が出る確率が1/2である必要もありません。女の子が火曜日に生まれる確率も不要です。パターン数を数えるだけですからね。そして最も大きなメリットは、難解な哲学に迷い込む心配が皆無であることです。

 

 ただし、これで、眠り姫問題の答えが1/2と思う人が、1/3に納得するかというと、それは期待できません。なぜなら、寝覚めた時に、眠り姫が受けた質問を次のように解釈するのも可能だからです。

 

眠り姫問題 別解釈

コインを投げたとき、出方のパターン数 (B)に対するコインが表であるパターン数(A)の比率は?ただし、曜日や起きているか寝ているかの違いは考えない。

 

 さらに、このような設問は簡単すぎてつまらないという欠点もあります。少々あいまいな文章をどのように解釈するのかを考えるのが確率クイズの面白いところかもしれません。

【5/23追記】

例題3の問題文を修正しました。

また、例題3をベイズの定理を使って解くと、以下の通り。

・少なくとも一人が火曜日生まれの女の子である確率P(B)は、以下の二つの和、

   第1子が火曜日生まれの女の子の確率

    1/2×1/7=1/14

    第1子が火曜日生まれの女の子の以外で、第2子が火曜日生まれの女の子の確率

    (1-1/2×1/7)×1/2×1/7=13/196

    よって、

    P(B)=1/14+13/196=27/196

・少なくとも一人が火曜日生まれの女の子であり、かつ二人とも女の子である確率 

    P(A⋀B)は、以下の二つの和

  第1子が火曜日生まれの女の子で第2子が女の子である確率

    1/2×1/7×1/2=1/28

  第1子が火曜日生まれ以外の女の子で第2子が火曜日生まれの女の子である確率

    (1/2×6/7)×1/2×1/7=6/196

 よって、

  P(A⋀B)=1/28+6/196=13/196

・以上より、少なくとも一人が火曜日に生まれた女の子であるとき、

 もう一人の子どもも女の子である確率 P(A|B)は、

  P(A|B)= P(A⋀B)/P(B)=13/27

 整理して計算しないと間違いますね。