■ 国債は何の為に発行するの
財務省は、国債を支出の財源だと説明します。でも政府日銀はお金を発行できますから、支出のために借金する必要はなく、明らかに嘘です。国債を発行する理由は別にあるはずです。その理由は、国債を発行して支出する場合と、支出だけする場合では、結果にどのような違いが生じるか確認すると分かってきます。
■ 支出だけするとどうなるか
政府が支出するときの具体的手続きは、次のリンク先に説明してあります。
それによると、政府が建設会社に10億円の公共工事を発注する場合の手続きは以下の通りです。
- 政府は10億円の政府小切手を建設会社に渡す。
- 建設会社は政府小切手を取引銀行に持ち込み「政府からの取り立て」を要求する。
- 銀行は、建設会社の預金口座へ10億円を記帳し、代金の取り立てを日銀に依頼する。
- 日銀は、「政府の日銀当座預金」から「銀行の日銀当座預金」に10億円を振り替える
以上は、すべて、民間銀行や日銀の預金口座の数字の操作だけで現金の移動はなく、結果は、「政府の日銀当座預金」が10億円減り、「銀行の日銀当座預金」と「建設会社の取引銀行の預金」が10億円ずつ増えます。これを、イメージしやすくするため、現金の移動に翻訳してみます。
最初、日銀にあった10億円の現金は日銀に戻ってきて、前の数字だけの操作と同じ結果になります。政府はお金を発行したわけですが、民間の現金が増えたのではなく、民間銀行の預金が増えています。いずれにせよ、市中に流通するお金(民間銀行預金)が増え、政府の日銀当座預金から銀行の日銀当座預金へ10億円が移動したという結果になります。
この場合は次のようになります。
- 政府が発行した10億円の国債を民間銀行が買う。その結果、民間銀行の日銀当座預金から政府の日銀当座預金に10億円が移動する。
- 政府は先ほどと同様に、建設会社に工事を発注する。その結果、政府の日銀当座預金から銀行の当座預金に10億円が戻り、民間銀行預金は10億円増える。
- 日銀当座預金は最初の状態にもどり、市中に流通するお金(民間銀行預金)が10億円増える。
■ 支出だけした場合と国債発行し支出した場合の結果の違い
どちらの場合も市中に流通するお金が増えるのは同じですが、支出だけ行うと、日銀当座預金の状態が変わります。これが変わると金利等に影響します。これは日銀が金融政策でコントロールすべきものですが、政府の支出で影響を受けてしまいます。
それに対して、国債を発行して支出すれば、金利には影響しません。
■ 政府と日銀のしていること
日銀は日銀当座預金の残高を調整して金利を制御します。あるいは、金利を調整して残高を調整します。これは金融政策といわれています。また政府は、支出や税の徴収、国債発行などで、通貨の流通量を制御します。これは、財政政策といわれます。これを行うのは、国民生活にもろに影響する景気や物価を制御するためです。
つまり、国家財政の支出や徴税や国債は、これまで繰り返し述べてきたように、家計の支出や収入や借金とは全く違うのです。財務省が家計と同じ用語を使って財政危機を訴えるのは詐欺師のミスリードみたいなものです。支出は通貨の発行であり、徴税や国債は通貨の回収と考えるべきです。発行した額以上の回収はできませんので、国家会計は「赤字」になるのが普通です。順序として、まず通貨の発行をしなければ回収はできませんので、「赤字」は当然です。累積で「黒字」になった状態とは、すべてのお金を回収したということで、世の中のお金がなくる事です。これを目指す財務省は頭がおかしいのではないでしょうか。
なお、政府日銀発行の通貨以外に、銀行が信用創造で生み出した預金という通貨もあります。これも考慮を入れれば、政府日銀発行額以上の回収も可能のように一見、思えます。しかし、多分無理です。簡単に言えば、日銀当座預金は政府日銀発行の現金扱いのお金しか預けられそうにないからです。これについては、別記事で考えてみたいと思います。
■ 民間資金の枯渇ってなによ?
財務省は、国債をいわゆる「借金」に例えて、財政破綻になると脅します。多額の国債を発行すると民間資金が枯渇し、金利が上昇するとも言います。確かに、国債を売って民間から回収したお金を金庫に仕舞っておけば枯渇します。実際は支出して民間に戻すので、枯渇するはずがありません。前述の通り、政府会計が黒字を続けると枯渇するのであって、全く逆です。財務省は何を考えているのでしょうか。