国家財政と家計の違いを考えて見たー(多分その1)

 財務省は、財政を家計の赤字に譬えます。しかし、通貨を発行出来て、税金を徴収できる政府日銀の赤字を心配するのは、直感的にも奇妙に感じます。財政赤字と家計の赤字は何が違うのでしょうか。経済の専門家がいろいろ解説しているので正確な説明はそちらにまかせて、直観だけでなく、納得できて分かり安い説明についていろいろ考えてみます。テーマはいろいろあるので、シリーズになるかもしれません。とりあえず(その1)です。

 

■ その1 国債の借り換えは借金で借金を返すことか

 国債の借り換えは、借金の返済を借金で行うようなイメージがあります。借金はどんどん膨らんでいき、いずれ破綻しそうで心配になります。しかし、企業は基本的に借金で運営されていますが、金銭感覚に乏しいギャンブラーがサラ金地獄で破産するようなことにはなりません。そもそも株式会社は借金から始まります。そして、お金が回っている限り倒産はしません。

 

 表1.にそのイメージを示しています。なお、利子などは無視して簡略化しています。最初は10の借金から始まりますが、それを元に事業を行い、仮に売り上げと支出が同じつまり利益ゼロでも、最初の10は残りますので、それで返済できます。最終的に負債は無くなり、初期状態に戻るので、このサイクルは繰り返すことが可能です。実際には利益が出ますので企業は発展していき、利子も払えます。

 

 一方、借金で借金を返すサラ金地獄は、表2.のようになります。返済のために2回目の借金をするわけですが、その借金は残ります。このサイクルを繰り返すと支出分の借金が積み重なっていきます。売り上げがないのに支出だけするのだから当たり前ですね。

 

 国債の借り換えもなんとなくこのイメージを抱いてしまいますが、国には税という収入がありますので、正しくは表3.にようになり、これは企業の表1.と全く同じなんですね。表2.のイメージは明白に間違いと言えますが、かくいう私も財務省に騙されてそんなイメージを持ちました。国債の借り換えは借金で借金を返すことではないというのが、まず私の思うところです。

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 ところで、表3.は借金(国債)から始まっていますが、税収から始めれば返済も不要です。そして多分、国の場合は税収から始まると考えた方が妥当だと思います。鶏が先か卵が先かということでいえば、企業の場合は、まず元手が無ければ売り上げも上げられませんので、借金から始まる場合が多いでしょう。それに対して、国には徴税の権力があるので、税収から始まると考えるのが妥当ではないでしょうか。ただ、それだと借金する必要はありませんが、現実には国債という借金をしています。これは何故でしょうか。

 

 思うに、国債とは、余裕のあるものに税の前納をしてもらっているのじゃないでしょうか。前納すれば割引されるのが普通で、国債には利子がついて戻ってきます。例えば、投資的支出のために増税したいとします。ただ、増税は国民にほぼ一律に行われるので、低所得者への影響が大きくなります。そこで、経済的余裕のあるものに先に負担してもらうわけです。投資的支出が効果を表し、経済が発展し、国民の所得が増えれば税収もふえますので、そこから、前納(国債を買った)者に返済(償還)できます。

 

 あるいは、既に前納しているので、後で納税する必要が無くなったとも解釈できます。国債を借金と考えて、国が返済すると考えるよりも、むしろ、この解釈が妥当かもしれません。何しろ国には国民に対して徴税の権力があるのです。そして税金は国民に返す必要はないのです。国債も税と関連付けて考えた方が分かり安いし、そう考えれば家計の赤字との意味の違いが良くわかります。海外の投資家が買った国債は文字通りの日本国の借金と言えますが、ほとんどの国債は国内で買われていて、その支出は国民のために行われます。政府という日本国民とは別の組織のために使われるわけじゃありませんからね