国家財政と家計の違いは何かな?(その9 タンス預金となった日銀当座預金)

■ 日銀当座預金を覗いてみた

  準備預金制度の目的を日銀は、「準備率操作を通じて金融を緩和、または引き締めることを目的としていた」と説明しています。

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   過去形なので、現在は準備率の操作はしていません。1991年以降、法定準備率は0.3~1%程度のままです。本来、銀行は預金を運用して増やすもので、日銀に預けて眠らせておきたくないはずなので、法定準備率を定め強制していたのだと思います。しかし、2000年代以降、法定準備率を上回る「超過準備」が常態化しており、逆にマイナス金利によって準備率を下げさせようとしている不思議な状態になっています。では、どのくらい超過しているのか、実態を覗いてみて驚きました。

 

業態別の日銀当座預金残高日本銀行

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  法定の準備額(所要準備額)12兆円程度に対して、準備預金額は、なんと490兆円もありました。準備預金制度を適用されない金融機関も含めると550兆円になっています。それも、2000年頃は数兆円程度だったのが、この20年ほどで急激に増えています。

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 素人目にも異常な状態に見えます。財務省は、国債を発行し続けると民間資金が枯渇し、国債を買えなくなって、財政が破綻するなんて言ってますが、枯渇どころか、バブル崩壊以降、数兆円から500兆円に増えています。増えてはいますが、日銀当座預金にただ眠っているだけで、投資には使われていません。結局、お金を日銀が回収したのと同じ結果になっており、金不足のデフレになるのも当然です。

 通常、国債を発行するのは政府が支出するためですので、国債発行で吸い上げた民間資金はすぐに支出されて、民間に戻りますし、日銀が民間銀行の国債を買えば、お金を新規に発行したことになります。このようにして増えたお金が市場で回転して景気がよくなるのを期待するのが金融緩和です。ところが、実態は、お金は日銀当座預金に眠っているだけで不景気が数十年も続いています。

 

■ スタグフレーション対策は?

 そうこうしているうちに、原油価格上昇などによるコストプッシュインフレになり、一方給料は下落し、消費は低迷し、景気は良くならないというスタグフレーションになってきました。なのに、銀行は日銀当座預金にお金を500兆円預けていて、誰も使おうとしないのです。政府が行うべきスタグフレーション対策はあるはずですが、政府からのアナウンスはまだ聞こえてきません。1970年代のオイルショックでは、インフレ対策の公定歩合引き上げを行い不況に陥りました。それまでの好景気が一気に冷え込んだのですから、デフレが続いた今、似たようなことはしないと期待したいですが、どうでしょうか。

 財務省は、お金があれば使おうとするのが人間で、抑制する必要があるという認識が強いのではないか思います。確かに、人間には、そういう面もありますが、お金を貯めこむ傾向もあります。質素な生活をしていた一人暮らしの老人が亡くなり、家から莫大なタンス預金が見つかったりします。金は天下の回り物、使ってこそ意味があると昔から言われているんですけどね。