国家財政と家計の違いを考えてみた(その4自分が書いた借用書を貯めこんで喜ぶ財務省)

  • 自分が書いた借用書は破りすてる

 借用書を借主に示せばお金が得られます。なので、貸主以外にとって借用書は価値があります。しかし、当たり前ですが、借主が持っていても価値はありません。普通、借用書が借主の元に戻ってくれば、破り捨てられます。昔のドラマでにあるシーンです。

  • 預金通帳は銀行の借用書

 同様に、通帳を銀行に示せばお金を得られますので、預金通帳は銀行が借主である借用書みたいなものです。お金を預けた口座主が貸主です。銀行預金は他の口座に振替や振込ができますので、通貨としても認められています。一々、現金をおろして、他の口座に預けないでよく、預金のまま流通しますからね。

  • 借用書の裏付け

 銀行預金は、現金を預けるほかに、融資によっても生まれます。融資先の借用書と銀行の借用書である預金を交換するわけで、信用創造と言われます。つまり、預金の裏付けには、口座主が預けた現金である場合と融資先が書いた借用書の二種類があることになります。信用創造と言っても、無制限に生み出されるわけではなく、融資先の返済能力に制限されます。それはそうでしょう。

・戻ってきた借用書は消滅する

 さて、非現実的な思考実験みたいな問です。預金は通貨と認められているので、融資先が融資を受けた直後に、その融資された預金で返済したらどうなるでしょうか。答えは、その預金は消滅するです。意味が分かりにくいと思いますが、これは融資先が預金から現金を引き出して、その現金を返済することと同じです。預金残高はゼロになって消滅しています。冒頭の借用書が借主に戻ってくれば、借用書が無意味になったのと同じです。預金は銀行の借用書です。この思考実験は、結局、融資を受けなかっただけのことですが。

  • 政府日銀に戻った現金は消滅する

 さてさて、現金は政府日銀の借用書です。兌換紙幣時代なら、金と交換できましたし、現在では、納税したと認められます。だから信じられないかもしれませんが、奇をてらった言い方をすれば、政府日銀に戻ってきたお金は消滅します。支出するときは新しく発行すれば済みます。とはいえ無制限に発行できないのは銀行預金と同じです。融資先の返済能力に相当するのが、民間の経済力です。

  • 銀行や政府日銀のお仕事

 つまり、銀行は、融資によって、融資先が利益を上げるようにするのが仕事です。その結果、負債である預金は返済と相殺して消滅しますが、利子の分だけ儲かります。また、融資先も成長します。同様に、政府日銀は、お金の発行によって、国民が利益を上げるようにするのが仕事です。その結果、負債であるお金は納税などで政府に戻ってきて消滅しますが、経済発展によって納税額は、利子が付くように増えます。また国民も経済成長によって豊かになります。その過程でお金は発行(支出)され増え続けます。

  • 自分で発行したものの収支は、基本「赤字」

 銀行が発行した通貨である預金も、政府日銀が発行したお金も、自分が持っていても無意味なものです。融資先や国民の取引の交換手段として使われて意味があります。これまた思考実験で、銀行の収支を自分が発行した預金で考えると基本的に「赤字」になります。「支出」は新しく増えた預金額で、「収入」は、引き出された金額なのですからそうなります。「収入」とは、預金通帳から消された金額であり、一昔前の銀行の窓口で現金引き下ろす時に提出した書類みたいなものです。ある期間に限れば「黒字」もあり得ますが、別に銀行にとって嬉しくもないでしょう。トータルで見れば、自分で発行した以上の額は戻ってくるはずがありません。

 財務省は、預金引き出しの申請書や自分が書いた借用書を集めて「黒字」なったと喜んでいる変わり者です。国民を豊かにする気はないようです。