エスカレーターで歩かないのは緩い原則

 エスカレーターの片側空けは、急いでいる人への配慮が発祥で次第にマナーとなりました。一部の人はルールと勘違いしているようですが、配慮ですよ。 配慮とは、したほうが望ましい気づかいですが、しなかったからと言って、重大な支障が生じるわけでは有りません。もし、支障があるのならば、マナーではなく施設管理者がルールにしたり、場合によっては法律で規制しなければならんでしょう。

 前回の記事でエスカレーターで歩く人のほとんどに、急ぐ理由がないと述べました。従って、急いでいる人に配慮しなくても重大な支障は生じません。利便性が損なわれ、不快な気分になってストレスが溜まるかもしれませんが、その程度の支障です。その程度の支障もないに越したことはないだろうと心暖かい配慮からマナーとなったわけです。

 その後、片側空けで別の支障が生じる人がいることが分かってきました。その支障も重大な支障とまでは言えないならば、お互いのストレスを衡量して解決策を図ることになります。でも、対立のストレスを増やすのも本末転倒です。ムキにならずに譲った方がストレスになりません。譲り合いもマナーです。冒頭に述べたように、元々、片側空けは配慮ですからね。その程度のものです。それを権利のように思って、配慮が足りないと怒るなんて、勘違いした道徳教育推進教師ですね。

 ところが、片側空けの支障は利便が損なわれるというレベルではなくて、危険という重大な支障だったんです。そもそもエスカレーターは階段の規定を満足しておらず、歩いてはいけないものです。実際上それほど危険ではないだろうと黙認されていましたが、残念ながら接触転落事故がそこそこ発生しています。
 厳しく言えば、歩いてはいけないのは、マナーではなく、法律で規制されています。ただ、施設の設計や管理者側の規制なので、利用者を直接規制できなかったけです。6年前の記事にも書きましたが、東日本大震災後の節電で停止したエスカレーターは使用禁止になっていました。階段として利用させて事故が起こった場合、管理者責任を問われる可能性があったからでしょう。東芝エレベーターの「エスカレーターを所有・管理する皆さまへ」にも次のように書かれています。要するに、安全第一、利便第二です。

エスカレーターを休止する場合は、一般の利用者が階段として使用しないように、進入防止処置を実施してください。

利用者がつまずき、転倒するおそれがあります。

  とはいえ、法やルールでガチガチに規制するのも嫌ですね。乗り降りの際は歩かざるを得ないし、接触転落の恐れがないなら自己責任で歩いてもいいでしょう。生まれてこの方、歩いたことは無いし、今後も絶対歩かないという人もいないでしょう。立ち止まっている人がいても「ボーッと突っ立ってんじゃねえよ。邪魔だどけ」なんて言わ無けりゃいいです。

 片側空けも配慮なら良かったんです。それがルールみたいになって雰囲気が悪くなりました。その反動で歩くなルールが同じ轍を踏むのは避けたいですね。あくまで緩い原則ということで普及して欲しいです。