家庭内禁煙条例

 何でもそうですが、東京都の家庭内禁煙条例案にも賛否があります。否定的な意見は、家庭内の私的なことにまで、行政は介入すべきでないというもので、肯定的な意見は子供の受動喫煙児童虐待に準じるので家庭内といえども介入すべきというものです。私の考えでは、家庭内問題への行政不介入が大原則であり、児童虐待の場合の介入は例外的扱いだと思います。例外的扱いをしてよいかどうかの判断は、子どもの被害の程度によりますので非常に悩ましくなります。普通の暴力的虐待も、躾と虐待の境界を明確にすることはできず、一律の判断はできません。

 ただ,家庭内への介入という事例は殆どありません。家庭内での子供の被害は受動喫煙以外にも様々なものがあります。例えば、親の料理にジャンクフードが多く、子どもの健康に被害をもたらすようなことがありますが、行政が介入して家庭料理について規制してはいません。規制しだしたら,大きなお世話と言われるに違いありません。他にも子供に害をもたらす親の行為はいろいろありますが、直接的な暴力以外では法規制はありません。間接的な因果関係の法的責任が問われることは殆どありません。風が吹けば桶屋が儲かるとなって収拾がつかなく恐れがありますから。規制があるとすれば、間接的でもその影響が大きく、被害が非常に大きい場合だけです。

 では、子どもの家庭内受動喫煙の害はどれほど大きいのでしょうか。少なくとも、法規制しようというのならば、定量的かつ医学的そして統計的エビデンスが必要です。それが十分にあれば法規制も必要でしょう。

 でもね、小池知事にはエビデンスに基いているという印象が全くないんだな。実はあるのかもしれないけど、今のところ示していないし。それに、小池知事の施策は話題や注目を集めるための手段って感じで、施策そのものにあまり興味を持っている風情じゃないんだなあ。豊洲市場騒動では、当初から、「一部の築地仲卸業者への人気取りのために,あんな見込みのない移転中止を匂わせて、どういう落としどころにする気かね?」と取りざたされてたなあ。それで、結果は予想通り,大金を無駄にして移転が遅くなっただけ。築地市場の再生も選挙対策で,本気かどうか疑われているし。関心は自分の政治家としての人気の拡大で、市場もオリンピックも家庭内禁煙もそのための道具に過ぎないんじゃないかという疑いが払えないんだなあ。というか都政自体が,次の政治ステージへのステップに過ぎない感ありすぎ。都政に功績を残してくれれば,次のステップに喜んで送りだしてもいいけど,後を濁した鳥になりそうだし。これ以上疑われないように、せめて家庭内禁煙ではエビデンスをよろしくお願いしますよ。

 と一応言ったものの、家庭内禁煙条例なんて、実効性ゼロです。まさか各家庭に監視カメラを設置したり、密告制度を作るわけにもいきません。仮に、違反者を見つけても罰則のないザル条例じゃどうにもなりません。子どもの健康被害をぜひとも減らしたいという気持ちというよりも、オリンピックで店舗の禁煙が話題になっているので、ついでに家庭もと言っておけば受けるかも,じゃないかと。