「両面とも赤」と「2枚とも赤」

 前の記事の続きです。
もう1人も女の子の確率・・・もう1人って誰?

次の問1,2の違いをわかりやすくしたものが,問A,Bです。

問1
近所に引っ越してきた一家には子供が2人います。
奥さんに「女の子はいますか?」と訊いたら、「おります」という返事でした。
もう1人が女の子である確率はいくらですか?

問2
近所に引っ越してきた一家には子供が2人います。
奥さんが女の子を一人連れて挨拶にきました。
もう1人が女の子である確率はいくらですか?

問A
 表裏とも赤に塗ったカード、表裏とも青に塗ったカード、表を青に裏を赤に塗ったカード、表を赤に裏を青に塗ったカード、が1枚ずつあります。4枚のカードを箱に入れて、相手に1枚だけ引いてもらいます。相手に「そのカードには赤く塗られた面がありますか?」と訊いたら、「はい」と答えました。そのカードが両面とも赤である確率は?

問B
 赤に塗ったカード4枚と、青に塗ったカード4枚を箱に入れて、相手に2枚引いてもらいました。そのうち1枚を見せてもらうと赤でした。もう一枚のカードも赤である確率は?

 問Aの答えは、1/3で、問Bの答えは、3/7であることは、説明不要でしょう。問Bの赤と青の4枚ずつというのを、5枚ずつ、10まいずつと増やしていくと、確率は1/2に近づいて行きます。これが、奥さんが一人の女の子を連れているのを見た状況に対応しています。

 問AとBは,数学的に、難しい内容は一切ありません。事後確率という少々考えにくいところはありますが,情報を得た後で起こりうる事象を全て数え上げればよいだけです。しかし、問題文で与えられた情報の解釈を間違いやすく,それは狭義数学の能力とはあまり関係ない読解力によります。だから、数学者でもモンティホールの問題を間違えたのだと思います。ただ,広い意味では,読解力も数学の能力かもしれません。数学も言葉の一種ですから。

 言葉といえば、基準とか規定を作る仕事をしていると、規定文の解釈が確定せず、あいまいになったり、明確だと思っていても、思いもよらぬ解釈をする人が現れて驚くことがよくあります。よくあるどころか、ほどんど、そのようなあいまいさの解決に頭を悩ませているのが実態です。このように、自然言葉の扱いは厄介なので、数学者は数式を使うのだと思いますが,普通の出題は自然言語で行うしかありません。数学ガールの村木先生のカードみたいに,数式と数字が並んでいるだけの場合もありますが。