公設市場の将来

豊洲が目指す市場の姿 維持費が「築地より高くて無駄」は妥当か
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しかし、豊洲が使われていない間にも電気・水道、警備費などで1日あたり500万円かかる。開場後には1日2100万円になる。これは築地の約4・9倍だ。
築地の機能を超えた衛生管理や品質の安定を目指し、車の渋滞や事故を防ぐための広大な敷地を警備することで高くなる。
「『築地より高いから無駄だ』との声もありますが、築地以上に品質や安全を確保するのにはどうしてもコストがかかるのです」

 通常,建物建替の原因は老朽・狭隘,機能の不備です。従って,面積は増え,機能も最新のものに向上します。その結果,設備の省エネ化にも拘わらず,維持管理費は増えてしまいます。軽自動車から普通車に買い替えれば,自動車税も燃費も増えるようなもので,当たり前なのですが,事前に十分説明しておかないと,クレームの元になります。 

改善を嫌がる理由
http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20161209/1481272432

 豊洲移転では,建物の耐震性や土壌汚染対策の盛土なんぞは移転反対の口実に過ぎないと当初から感じていましたが,本当の理由は,移転に伴う経費負担のようです。

築地を離れられない理由
http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20161220/1482222793

 特に,中小規模の仲卸業者は経営難のため,維持費増や引っ越し費用を負担出来ず廃業せざるを得ない場合もあるようです。それは,築地現地建替えでも同じです。築地での現地建て替えは過去にも試みてとん挫しています。大きな理由は物理的に敷地が狭くて打って替え工事が困難なことですが,費用負担も一因だったと思います。物理的に現地建て替えが可能だとでも,施設機能が向上すれば維持費は増えますし,引っ越し費用は掛かります。特に引っ越し費用は移転の場合は1回ですが,現地建て替えでは2回必要です。

 つまり,経営難の解決なくしては,移転も現地建て替えも不可能で,築地の施設が廃虚化していくのを待つのみということになります。それでも,廃虚になるまでは相当の時間があり,それまでは生き延びられます。一方,移転や建て替えという改善を行えば,その時点で経営難の業者は淘汰されてしまいます。ならば,反対せざるを得ないでしょう。自分の立場だけを考えればそうなります。

 しかし,経営難業者以外の将来の展望のある市場関係者にとっては,廃虚での滅亡の道連れにされるわけで大迷惑です。さらに,都市交通のネックになっている築地市場の跡地利用を阻害され,市場関係者以外の都民にとっても大迷惑です。ついでに言えば,口実にされたあげく,市場問題PTとやらに呼び出されて,くだらない難癖に応えさせられた設計事務所も大迷惑です。スラム化した地域に居座る住民のため,都市環境が悪化するという問題に通じるところがあります。

 幸いにして,築地市場の現状は,観光名所でもあり,スラム街とは程遠い状況のように見えます。しかし,それがいつまで続くのか保証はありません。スラム街もある種の猥雑な魅力があります。築地市場の魅力も似ていて,しかも結構な危険性があるという点も似ています。そして,危険性が限界を超えると猥雑の魅力と賑わいも失われ,廃虚に向かいます。改善に手が付けられない以上,いづれ臨終は訪れるのじゃないでしょうか。