一部の仲卸業者は移転に何故反対するのか

 この疑問は私には畑違いですが,これが分からないと私の仕事である建築分野でデマが流れる理由もわからず,気持ち悪いのです。今のところ直接の被害はないものの,他人事じゃありません。青天の霹靂で,入札不正とか,設計ミスとか憶測で批判されて,「え,何?」とまごつきたくありませんからね。

 ということで,素人なりに調べてみると,仲卸業者の経営問題が根にあるのだという程度のことは分かってきました。では,なぜ経営が苦しくなったのでしょうか。素人の私向きに,わかり安く解説しているところが有りました。

 「卸売市場法の改正」で市場はどう変わったのでしょうか?

 平成16年6月に卸売り市場法が改正されています。この改正が仲卸業者にとって打撃が大きかったようなのです。改正の要点は次の通りと説明されています。

●卸売市場における品質管理の高度化
●卸売手数料の自由化
●商物一致原則の緩和
●卸、仲卸業者の事業活動の規制緩和
●財政基準の明確化
●卸売市場の再編の促進

 「品質管理の高度化」は,話題のコールドチェーンです。卸売会社は対応できているようですが,仲卸は正直あまり改善されていないと書いてあります。零細業者には荷が重いようです。

 「商物一致原則の緩和」は,市場外流通も可能になったということで,当然,仲卸業者にとって打撃です。

 「卸、仲卸業者の事業活動の規制緩和」は,事業活動の棲み分けが緩くなり,結果的に仲卸の仕事が侵食されたようです。

 「財政基準の明確化」は,従来は卸売会社だけであった財務状況の確認,報告が仲卸にも求められるようになったそうです。

 「卸売市場の再編の促進」は,市場の統廃合です。零細業者は地域とのつながりが大きいでしょうから,廃止されれば引っ越しすれば良いとは簡単にはいかず,大変そうです。

 「卸売手数料の自由化」は,競争が激しくなることですから,小さい仲卸にとって大変そうです。

 なんと,すべてにおいて仲卸業は時代の要請に対応できておらず,お先真っ暗みたいです。ただこの種のことは,どんな分野でもあります。昔は中小の自動車メーカーが結構存在しましたが,現在は小数の大手メーカーに統合されています。零細業者は車検と修理で生き残り,車の製造はほとんど不可能です。それでも,個性的な車で特徴を出して頑張っているメーカーもあります。

 また,公共工事の建設業は,大手と中小の棲み分けが官公庁の発注標準で行われていますが,境界が崩れ,中小の悲鳴が聞かれます。民間住宅を手掛けていた大工さんとなると,工務店の下請けか廃業,つまり統廃合の渦中で,なんとなく仲卸に近い境遇のように感じます。いや,大工さんには鑑札制度のような既得権がなく,まともに競争に晒されています。宮大工というのもありますが,特殊です。

 そういえば,市場の移転や統廃合は地方でもあると思うのですが,築地だけなぜもめるのでしょうか。寺社を背景とした宮大工と,銀座の高級店を背景にした築地仲卸業は,有利な条件に恵まれているという点でどことなく似ています。仮に銀座の店も一緒なら,すんなり移転となりそうです。法務出張所が移転すると,司法書士事務所も付いていくのを連想しました。つまり,築地のベンゼンは銀座を伴うので良いベンゼンだけど,豊洲ベンゼンは何も伴わないので悪いベンゼンなのでしょう。築地だけもめるのは,美味しい既得権があるからじゃないでしょうか。食の安全や建物の安全は築地と豊洲を比較すれば理由にならないのは明白で,後付けとしか思えません。

 豊洲移転は,「卸売市場における品質管理の高度化」に該当します。こういう時代の要請も,築地に居る限り,急には変えられないと時間稼ぎができますが,移転すれば待ったなしでしょう。というか,移転すれば自動的に受け入れることになります。一旦,受け入れてしまえば,他の要請も引き伸ばししにくくなるので,抵抗せざるをえないのかもしれません。豊洲移転反対は,その一つの現れに過ぎないのかもしれません。時代の変化を受け入れるという点では築地再整備も同じです。だから,移転同様に抵抗にあってきたのでしょう。再整備私案を小島座長が示しましたが,改修費用を仲卸が出すわけではないので,安くなっても仲卸の意向には関係ないと思います。もっとも,小島座長は使用料を2倍に値上げ案を示していて,仲卸の窮状は気にしていないようです。仲卸は,移転阻止のため現地再整備に賛成しても,いざ再整備に着手しようとするとどうなるか分かりません。

 仲卸業界もいろいろ大変だろうとは思いますが,他の分野に関わるデマを流して迷惑をかけないようにしてほしいです。逆に,建築や政治の非主流派が逆転を狙って,仲卸業を利用しているという面もあるようなので,お互い様かもしれませんが。