激甚災害指定を急ぐ理由

 熊本地震激甚災害指定が閣議決定されました。発災後10日ほどの指定は過去3番目に早いのですが,遅いという批判がありました。批判には指定は一刻も早い方が良いという前提があるわけですが,どうも勘違いっぽいです。激甚災害指定制度については,河野太郎防災担当大臣が簡潔に説明しています。


 批判は多分,激甚災害指定と災害救助法の指定を混同しているんでしょう。内閣府の防災情報のページを確認してみると,河野太郎防災担当大臣の説明に間違いはなさそうです。

内閣府 防災情報のページ
http://www.bousai.go.jp/taisaku/gekijinhukko/
http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/kyuujo.html

 激甚災害指定とは,一刻を争う災害救助ではなく,事態が落ち着いてから行う災害復興費用の国庫補助を認めるものです。手順としては,

・被災自治体が被害報告を所管行政庁に報告。報告は災害終息後1週間〜10日以内に概算被害額を、1ヶ月以内に確定報告。

・報告を受けた所管行政庁は被害報告額と全国の平均査定率から災害復旧事業費の査定見込額を算出、内閣府に報告。

内閣府は、この報告等を基に気象庁と協議、災害の被災地域や期間を確定。

・確定した災害の被災地域や期間を踏まえ、災害復旧事業の査定見込額を算出、激甚災害指定基準に照らして判定。

内閣府激甚災害の指定政令案を作成、内閣法制局の審査、中央防災会議への諮問、中央防災会議からの答申、閣議決定を経て指定政令が公布・施行。

 以上の手続きには,発災日から1ヶ月〜2ヶ月程度の期間を要するのが通例だそうです。ただ,以上の手続きをまともに行えば,2ヶ月程度は要するようで過去には実際にそのくらい掛かっています。

衆議院議員今野東君提出激甚災害の指定に至るまでの期間の短縮に関する質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b160031.htm

 また,上記の答弁書には,「被害状況の確定を待たず、指定基準に基づいた災害復旧事業の事業費の見込額等を用いることとしている」と答えています。この意味はよく分からないのですが,指定基準には個別の事業費の見込額が書いてあるはずもありませんから,算定するまでもなく,事業費は基準額を超えると判断しているのではないかと思います。それでも,手続きだけでも1ヶ月程度はかかるようです。これを更に早くするには,手続きをすっ飛ばす超法規的措置ということになるのではないでしょうか。災害の規模からして,指定されないことはあり得ない大災害の場合は,手続きをすっ飛ばすという判断は有り得るとは思います。

 おそらく,超法規的措置と思われるのは東日本大震災の時で,発災後2日で指定しています。上述の手続きを2日で行うのはどう考えても無理ですから。阪神大震災も異例に短く,1週間です。今回は10日ほどですが,これも非常に早いです。早過ぎて悪い事はありませんが,緊急を要するのは救助,応急処置,行方不明者の捜索などで,それが一段落しなければ復興には手を付けられません。そこまで急ぐ必要はあるんだろうかという気はします。

 そう言えば,過去の2例の時の総理は小泉首相菅首相です。劇場型政治とかパフォーマンス政治家とか言われてましたね。