「不思議な」パーキンソンの法則

 新国立競技場を巡る騒動は、「インパクト」の強い巨大建造物の建設が示す不思議な歴史法則を思い出させる。「パーキンソンの法則」だ。

 青山学院大学特任教授猪木武徳氏が、読売8月23日 「地球を読む」で述べていることです。「公的な施設の完成はその機関がピークを過ぎ、衰退期に入った時点で実現する」という法則だそうです。

 私は、パーキンソンの法則は知りませんでしたが、「豪華な社屋を作り出すと、企業は傾く」
という似たような俗説は聞いたことがあります。なんとなく納得させられる法則ですが、スポーツ選手の2年目のジンクス」と同類という気もします。新人王を獲得した選手は2年目は成績不振になるという「不思議な」ジンクスですが、これは単に平均への回帰として不思議でもなんでもないことだと説明できます。

 平均以上の活躍はそうそう連続してできないように、組織や国の反映もそうそう長くは続きません。1964年の東京オリンピックの時も巨大建造物を建設しましたが、なぜかパーキンソンの法則には従わず、その後も日本の発展はしばらく続きました。しかし、発展が永遠に続くはずもなく、作った施設が負担になっているという現象はあちこちで見らるようになります。特に地方自治体では大きな問題となっており、今まさに施設の「総合管理計画」を総務省の音頭で策定している最中です。

 つまり、別に組織が衰退期になると巨大建造物を作るようになるわけではなく、組織はいつだって作っています。衰退期になるとそれが、問題になるだけでしょう。衰退に機敏に反応して施設の整備のやり方も変えればよいのでしょうが、衰退への対応はタイムラグがあるのは施設の建造に限りません。なんだって繁栄期のやり方がしばらく残るものです。

 経済的に苦しくなっても豪邸に住み続ければますます苦しくなるのは別に識者が指摘しなくても常識でわかりますので、「法則」とは呼ばれません。しかし、少しレトリカルに「経済的に苦しくなると豪邸に住むようになる」というと法則っぽくなります。因果を逆転することで、不思議な味付けもできます。