憶測が事実に変わるとき

[ホメオパシー新聞]
ホメオパシーバッシングという「ステルスマーケティング」にご注意ください!!」
http://news.jphma.org/2014/08/post-dc04.html

 リンク先の記事の表現を抜粋してみました。

「・・・工作員が意図をもって活動しているのではと思ってしまったりします。」
「・・・報酬を得ている のかもしれないと思ったりします。」
「実際、真偽のほどはわかりませんが、・・・という情報が入ってきました。」
「もしこれが事実としたら、・・・」
「・・・という手法をとっていくと思われます。」
「・・・僅かな報酬で利用されていると思われます。」
「・・・その裏に本当の理由があることが推測されます。」

 この記事の内容は殆ど憶測であると,驚くほど正直に書いてあります。悪質な陰謀論では嘘を織り交ぜますが,この記事には事実に関する嘘はなく,誤った信念を述べているだけです。

 こういう記事が書かれたのはホメオパシーが悪い意味で知られるようになった危機感からでしょう。今までは,「ホメオパシーバッシング」をする人々は少数の同じ顔ぶれだったのが,今や,マスメディア,消費者団体,患者団体までもが批判をするようになり座視するわけにはいかない事情はよく分かります。無視は出来ないけど,批判の言説に真っ向から反論出来ない場合,盤外作戦で批判の信用を落とすのは有効な手段です。よくあるのは醜聞を暴露するという手ですが,取材などの手間が掛かります。また,陰謀論という手もありますが,陰謀の証拠をねつ造するのも面倒ですし,嘘がばれると逆効果です。

 ステルスマーケティング説も陰謀論の一種ですが,証拠をねつ造するのではなく,単なる憶測を書き連ねるのは弱いように思えます。しかし,実は意外に効率的です。先ず手間が掛からないという大きなメリットがあります。さらに,嘘がばれる心配もありません(ステルスマーケティングではないという証明は難しい)。そして,最大のメリットは,あらゆる批判に適用出来るという万能性です。消費者団体,医学界,厚生労働省や政府でも他のどんな誰が批判しても,実はいつものメンバーのステルスマーケティングだといっておけば済みます。

 そんな根も葉もない与太話に効果があるのかと疑問に思う人も多いかも知れませんが,ワクチン拒否などで,権威筋を疑う人々は沢山います。与太話も噂になってしまえば十分効果を発します。噂が世間一般に広がらなくても,既にホメオパシーを愛用している顧客をつなぎ止める効果は十分有ります。というか,顧客向けへのお知らせなのでしょう。

 ところで,この万能性はあらゆるものに効果が有るというホメオパシーレメディに通じるところがあります。レメディの効果を信じさせるのは,臨床データでも,医学的理論でもなく,体験談です。「この目で幽霊を見たのだから間違い無い」という主張は非科学的ですが,結構,人間の感情に訴えます。「病気に効いたと実感したのだから間違い無い」も「ステルスマーケティングだと感じたのだから間違いない」も直感だけで証拠は不要です。行動経済学の実験によれば,人間は意識的な努力が必要な合理的思考よりも直感を好む怠け者です。そして,直感はちょっとした経験や与太話で形成されます。

 砂糖玉を薬と信じこんでいるのなら,根も葉もない憶測を事実と信じても無理はありません。