水俣病とCS

コメントした以外にも,いろいろ気になる点があります。


>では詳細な物質や機序がわかるまで、棚上げすべきでしょうか? その姿勢こそ水俣病対策が遅れ被害を広げた原因だと、著書『医学者は公害事件で何をしてきたのか』において、疫学者の津田敏秀氏は述べています(以下引用はこちらの本から)。

水俣病では,有機水銀中毒説やチッソ犯人説を疑うに足る証拠があったにも拘わらず,科学的に確実ではないという理由で,対応を先送りにしてしまいました。一方,「化学物質過敏症」の原因が超微量の化学物質だという客観的根拠はありません。早く決断すべきだと言うだけなら,「水俣病有毒アミン説」を採用することも可となります。
 科学的厳密性に拘るあまり,現実の問題の決断を遅らしてはならないことと,科学的根拠がほとんど無いものを認めることは違います。

>たとえば水俣病関連でも、糖尿病や脳血管疾患の既往があると、症状はそれらのせいであるとして水俣病を否定できるかのような誤った言説がある、 との津田氏による批判があります。これらの「非特異性」によって、非典型例とされた神経症状への認定が行われないことが、今も水俣病患者を苦しめています。

これは,有機水銀説が認められた後の認定の遅れの問題です。CSはまだ認められていないという決定的違いが有りますが,仮に疾患概念として認められたとしても状況は異なります。
水俣住民であることは,水俣病である相当の疫学的根拠になります。症状が非典型例というだけで認定を行わないというのは問題です。しかし,水俣とは縁もゆかりもない人が有機水銀中毒かもしれないと訴えてきた場合には、認定に慎重になるのは当然でしょう。

 CSは仮に疾患概念として認められたとしても,後者の慎重な認定が必要な場合に相当します。

 さらに,大きな違いは,水俣病の認定は患者に大きなメリットがあるのに対して,CSの認定にはそんなものはありません。むしろ拙速は患者の不利益になりかねません。そして,水俣病の認定とは賠償問題としての原因者がチッソであることの認定が大きく,単に有機水銀中毒という医学的認定ではありません。CSにはそのような側面はありません。