杉並病とCS

SIVADさんは,杉並病を引き合いに出していますが,公調委は杉並病を「化学物質過敏症」と認めていません。

公調委裁定の要旨は以下の通りです。
http://www.soumu.go.jp/kouchoi/activity/suginam.html

1.申請人A(申請人のうちの一人)のH8年4月から8月頃に生じた被害の原因は,杉並中継所から排出された化学物質によると認められる。
2.申請人AのH8年9月以降に生じた被害の原因,及び申請人A以外の申請人の被害の原因は,杉並中継所から排出された化学物質によると認められない。

申請人は「化学物質過敏症」患者であるが,申請人以外の住民にも被害が発生しており,これらの住民と居住状況などが同じと見なせる申請人Aについて,8月までの被害の原因を杉並中継所と裁定しているのです。周辺住民の被害はH8年4月から8月に集中しており,9月以降は人数も大きく減り,地理的にも分散するようになっています。

中継所の排気はH8年7月30日以降に測定され,健康不調の原因となる化学物質は検出されていませんが,それ以前は不明であり,原因ではないと認めることは出来ないというものです。

また,申請者は健康被害の原因物質はプラスチック起源の有害物質と主張し,区は排水からの硫化水素と主張していますが,裁定はどちらとも特定していません。区は硫化水素の発生と被害の関係をを認めており,排水が放流されていた時期はH8年7月中旬まです。

申請者は排気中の化学物質が検出されないH8年8月以降も被害が起きているのは,超微量の化学物質でも反応する「化学物質過敏症」であるからと主張しています。しかし,裁定では仮に「化学物質過敏症」により発症したものだとすると,中継所の操業と関係付けることはできず,また「化学物質過敏症」はいまだ仮説の段階であり,申請人Aの症状の病因を「化学物質過敏症」で説明することは困難としています。

結局,中継所からそれなりの量が排出されたと推測される期間の被害について中継所が原因であると裁定していますが,化学物質過敏症によると申請人が主張する8月以降の被害の原因は中継所とは認められないとしているのです。

もちろん,被害が無いといっているのではありません。化学物質過症は仮説の段階であり被害の原因と認められないと言っているのです。そして,仮に化学物質過敏症が被害の原因だとしたら,原因者が中継所と確定することは出来ないと言っているのです。