当たり前すぎるのに使いにくいベイズの定理

 前の記事にベイズの定理を使った計算を追記しました。この計算経過に、「少なくとも一人が火曜日生まれの女の子であり(B)、かつ二人とも女の子である(A)確率P(A⋀B)を求めるところがあります。最初、これを  

 P(A)×P(B)=1/2×1/2

としてしまい、混乱しました。

 正しくは、

 P(A∧B)=P(A|B)×P(B)

です。

 どころで、これ、なんだか奇妙に感じませんか、条件付き確率を計算するベイズの定理の式の中に条件付確率の式が出てきます。式で表せば次の通りです。

 

 P(A|B)=P(A∧B)/P(B)    ・・・ベイズの定理

    =P(A|B)×P(B)/P(B)
         = P(A|B)

 

 「なんじゃこりゃ!」と言いたくなりますが、ベイズの定理は当たり前すぎることを述べているだけなんですね。式で表せば、

 X/Y=(X/Z)/(Y/Z)

という馬鹿みたいな関係です。言葉で言えば、XをYで割ったものは、「XをZで割ったもの」を「YをZで割ったもの」で割った値に等しい、ということです。ここで、「XをZで割ったもの」を「Zという条件でXの起こる確率」と言い換えれば、

「Yという条件でXの起こる確率は、Zという条件でXの起こる確率をZという条件でYの起こる確率で割ったもの」

というベイズの定理になります。このように言えば定理っぽいですが、内実は馬鹿みたいです。

 馬鹿みたいに当たり前なのに、実際に計算しようとすると分かりにくく間違い安いという困ったところがベイズの定理にはあります。条件付き確率なのに、全事象に対する事前確率と混同しやすいです。X/Y=(X/Z)/(Y/Z)という数式では、分母を意識しないわけにいきませんが、確率の文章になると、重要な条件である分母を軽視しがちになります。

 確率の積の法則は、

 P(A∧B)= P(A|B)×P(B)

ですが、AとBが独立していればP(A|B)=P(A)となり、

 P(A∧B)=P(A)×P(B)

としてもよくなります。確率の問題にはそういうものが多いので、独立ではない場合にも同じようにしてしまうのかもしれません。

 特に、ベイズの定理の式を使うと、このうっかりが起きやすいような気がします。前の記事で示した表の様に、重複なく、もれなく数えあげて、割り算した方が分かり安くて、間違いも少ないと思います。割り算すれば分母を意識しないわけにはいきませんからね。