前の前の記事で、眠り姫問題には錯覚を起こす仕掛けがあると書きました。その続きです。
ここで、問題を言い換えます。
問2:「さあ、あなたは目覚めた。今日がコインの表が出た後の日である確率は?」
これだと、1/3のように感じませんか。3日ある目覚める日のうち、表が出た後の日は1日だけですからね。
オリジナルの質問は次の通りです。
問2:「さあ、あなたは目覚めた。場合 Aである確率は?」
なお、
- 場合A:表が出た場合 - あなたは月曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、ずっと眠り続ける。
- 場合B:裏が出た場合 - あなたは月曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、火曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、ずっと眠り続ける。眠りは記憶を消すほど深いので、目覚めたとき月曜か火曜かはわからない。
意図的かどうかわかりませんが、ここにも仕掛けがあります。場合Aとは「表が出た場合」であり、場合Bとは「裏が出た場合」です。特に場合Bには火曜日に起こされ、インタビューされることも含んでいることが要注意です。「今日が場合Aに含まれる日の確率」ではなくて、「場合Aが起こる確率」を尋ねていると錯覚しませんか。つまり、表が出る事前確率のように誘導しているわけです。
場合Aが起こる確率は、1/2であり、場合Aかつ起こされる確率と場合Aかつ起こされない確率は、ともに1/4です。また場合Bが起こる確率は、1/2で、場合Bかつ起こされる確率も、1/2です。目覚めたときに尋ねているのですから、起こされている場合に場合Aである確率を尋ねていると考えるのが普通ですが、質問の文言は単に場合Aが起こる確率を尋ねているだけなんですね。なんともあいまいです。
パラドクスのように感じて混乱するのは、解答者が「今日が場合Aに含まれる日である確率」と「場合Aが起こる確率」の違いを明確に意識していないからだと思います。違う事柄の間で思考が行ったり来たりして奇妙な気分になります。私自身がそうでした。
私は、言葉で考えていてスッキリしないときは、図表を描いてみます。描き表せればスッキリすることが多いし、うまく描き表せないときも、何か錯覚していると気付けます。