6年間に1回発生する地震の発生確率は?

 算数教育の専門家らしい滝井章氏のコラムが炎上しました。「1つの機能につき1/10の確率で故障するなら、機能が10個あれば10/10の確率で故障する」と書いてあります。「コインを投げたら、表が出たので、次は裏が出る」に近いレベルの間違いですね。炎上やむなしです。

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 独立事象や従属事象などの確率の基本中の基本を理解していれば、このような間違いは犯さないはずですが、実は、滝井章氏をあまり馬鹿に出来ない前科が私には有ります。その説明のために例題をいくつか作りました。簡単な問題です。なお、確率の和や積の計算よりも、しらみつぶしに根元事象の頻度を数えて、最後に確率にする方が分かり安いので、解答はそのように説明しています。

 

問1-1 サイコロを6回投げたとき、1の目が1回だけ出る確率?

 6回投げた時の目の出方は、6×6×6×6×6×6=46656通り。

  1の目がでる回は1回から6回までの6パターン。

  それぞれのパターンの目の出方の頻度は、 

 1×5×5×5×5×5=3125通りなので、

 1回だけ1の目が出る頻度は、6×3125=18750。

 よって1回だけ1の目が出る確率は、18750/46656=0.402

 

問1-2 サイコロを6回投げたとき、1の目が2回だけ出る確率?

 2の目が出るパターンは、6個から2個選ぶ組み合わせがあり、6C2=6×5/2=15通り。

 それぞれのパターンの目の出方の数は、 

  1×1×5×5×5×5=625

    よって、1の目が2回出る確率は、

  15×625/46656=9375/46656=0.201

 同様に、1の目が3回だけ出る確率は、 

  6C3×5×5×5/46656=2500/46656=0.054

  1の目が4回だけ出る確率は、  

   6C4×5×5/46656=375/46656=0.008

 1の目が5回だけ出る確率は、

        6C5×5/46656=30/46656=0.001

 1の目が6回出る確率は、1/46656=0.000

 

問1-3 サイコロを6回投げたとき、1の目が1回以上出る確率?

  問1-1と問1-2の合計になるが、次の様に考えれば簡単。

 1回も1の目が出ない頻度は、5×5×5×5×5×5=15625。

  よって、1回以上、1の目が出る確率は、

   (46656-15625)/46656=0.665。

 

問1-4 サイコロを6回投げたとき、1の目が出る回数の期待値?

 1回投げた時1の目が出る回数の期待値は、

   1×1/6+0×5/6=1/6。

 よって、6回投げた時は、1/6×6=1回。

 滝井章氏は、この期待値と確率を混同していた可能性がある。

 

問2-1 6本のうち、1本だけ当たりくじがある。1本選んだ時、当たりの確率。

 いうまでもなく、1/6

 

問2-2 6本のうち、1本だけ当たりくじがある。一度に6本選んだ時、当たりの確率。

 計算するまでもないが、6×1/6=1

  滝井章氏は、この確率と混同していたのかも。

 

問3-1 1年間に1回発生する確率が1/6の地震がある。この地震が6年間で1回以上発生する確率

 この問題では、最初から確率で考えた方が分かりやすいかもしれないが、他の問題との関係が見やすいように、頻度で考える。頻度で考えるため、1年間の地震有頻度1回に対して地震無頻度が5回とする。

 6年間の地震有無の頻度総数は、

  6×6×6×6×6×6=46656

 6年間で1回も地震が発生しない頻度は、

  5×5×5×5×5×5=15625

 よって、6年間で1回以上発生する確率は、

  (46656-15625)/46656=0.665

 問1-3と同型の問題だ。

 

問3-2 1年間に1回だけ発生する確率が1/6、2回以上発生する確率が0の地震がある。この地震が6年間で発生する回数の期待値?

 1年間に発生する回数の期待値は、

  1×1/6+2×0+3×0+・・・=1/6

 よって、6年間に発生する回数の期待値は、1/6×6=1回

 問1-4と同型の問題だ。

 

問3-3 1年間に1回だけ発生する確率が1/9、2回だけ発生する確率が1/36、3回以上発生する隔離が0の地震がある。この地震が6年間で発生する回数の期待値?

 1年間に発生する回数の期待値は、

  1×1/9+2×1/36+3×0+・・・=1/6

 よって、6年間に発生する回数の期待値は、

  1/6×6=1回

 

  実は、私も滝井章氏とさして変わらない間違いを犯していました。何かおかしいと思いながらも、6年間に1回発生する地震の発生確率は1/6だと思っていたのです。これは、問自体に不備があります。「地震の発生する確率」だけでは不十分です。期間や発生回数を指定しないと確率は求められません。例えば「地震が1年間に1回以上発生する確率」のように問わねばなりません。そのようにしても、まだ答えは定まりません。上記の問3-2と問3-3は、どちらも6年間で1回発生する地震ですが、1年間で1回以上発生する確率は、1/6と1/9+1/36=5/36と違います。期待値が同じになる確率分布は無数にあります。

 滝井章氏のコラムの「1/10の確率で故障」という表現も「地震の発生確率」のように、不十分です。「1万時間運転した時、1回以上故障する確率」とか「耐用年数の間に1回以上故障する確率」のようにいう必要があります。1万時間で1回以上故障する確率と2万時間で1回以上故障する確率は違いますから、「1/10の確率で故障」では、意味不明です。確率は、(確率を考える事象の頻度)/(すべての事象の頻度)なのに、すべての事象の条件がないのです。

 前述の様々な問題のうちどの問題を考えているのか、自分でわかっていなければ、間違うのは当然です。解答を考える以前に、問題をわかっていなかったのです。

 

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