過去の履歴から地震の予測ができるか

 一つの断層に発生する地震に周期が遭ったとしても,ある地点に地震をもたらす周期の異なる断層は沢山あるので,その地点で感じる地震の発生はかなりランダムになるはずだと,前の記事で書きました。

 「69年周期説は否定されたが,まだ名残がある」
http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20160613/1465807257

 その様子を見るため,簡単な計算をしてみました。計算の前提は以下の通りです。

・平均的な地震発生間隔が1000年の断層が10個,2000年が7個,3000年,4000年,5000年,10000年は1個ずつ想定する。以上を総合すると,平均発生間隔は69年程度になる。
・初期値(最初の地震発生年)は偏らないように,適当にばらまく。
・完全に周期的な場合と,±10%の範囲で発生間隔が変動する場合を計算する。

 計算結果を下表に示します。上二つは,0から100,000年間の1000年区間毎の地震発生数を示しています。完全に周期的な場合は,1000年間に13〜18発生しているのに対して,10%変動周期の場合は多少ばらついて,10〜19の発生です。最下行は1万年間の発生数で,二つのケースでの差はほとんどありません。

 下二つの表は,80000〜90000年について,100年区間の発生数の詳細を示しています。完全周期的では最大値3回ですが,ほとんど1〜2回です。それに対して,変動周期では,0〜6回と大きく違いが出てきます。6回とは平均的な発生間隔が20年ですから,69年を大きく下回ります。また,200年間の発生数が0の場合も結構あります。


要するに,個々の断層が周期的に地震を起こしていても,周期の異なる多数の断層が組み合わされれば,地震の発生間隔は一様にはならないというほぼ当たり前のことを確認しただけです。

 そもそも,断層の平均的な活動間隔は最低でも1000年というレベルですから,69年という間隔で地震が発生するためには,多数の断層がどういうわけか協調して69年毎に順番に活動する必要があります。そのような周期が観測されたのは,世界中で鎌倉のただ一箇所だけで,それもある期間だけに限定されています。偶然と考えるのが普通でしょう。

 それで,何を言いたいかというと,「しばらく地震が起きていないから,そろそろ危ない」とか「地震が起きたばかりだから,当分大丈夫だ」なんて考えない方が良い,です。