掛け算順序とジョーク作家クラブ

 掛け算の順序論者は、ひとつ分といくつ分を区別することが大事だといいます。掛け算の導入には、いろんなやり方がありますが、一つのやり方として別に異論はありません。私の時代には掛け算順序など習った記憶はありませんが、「3個の固まりが4つある」という程度は習ったと思います。問題は、数式の左にひとつ分を、右にいくつ分を書かなければならないというウソルールです。

 なぜウソルールが必要なのかというと、3×4という数式の3と4のどちらがひとつ分でどちらがいくつ分なのかを区別するためで、なぜ区別する必要があるかというと、子供がどちらをひとつ分と理解しているか判別するためだと彼らは言います。

 実に奇妙な理由ですね。日本語を理解できる子供なら、「一人に4個ずつ、3人に配ると全部で何個」という問題を読めば、4個がひとつ分と分かるでしょう。(トランプ配りなら3を一つ分と考えることもできますが、「常識的」に考えることにします。)それでも、子供がどちらをひとつ分と考えているか疑うなら、「どちらが一つ分か」と尋ねればいいんですよ。

 わざわざウソルールを覚えさせて数式から判断しようとするのは、回りくどいだけでなく、ウソルールを覚えているという前提が必要になります。その前提が成り立たないことは、ひとつ分を理解していないことより可能性ははるかに高いと思いますね。ウソルールを逆に覚えていて、ひとつ分といくつ分を逆と考えていれば、「正しい順序」の数式になります。子供の理解度を知るにはまったく役に立たないウソルールです。

色の名前の赤と緑を正しく覚えているかを確かめたいなら、赤と緑の色を見せて、どちらが赤かと尋ねれば済みます。ところが掛け算順序論者は、わざわざ、赤は1番、青は2番というルールを覚えさせて、どちらが1番かと尋ねているわけです。

 冗談みたいな話ですが、実際にこの奇妙な掛け算順序論とよく似たシュールなジョークがあります。それは次のようなものです。

 ジョーク作家クラブの懇親会では、ジョークを披露しあうが、ジョークを最初から最後まで言うような時間と手間をかけない。すべてのジョークには番号が振ってあり、クラブ会員の誰かが番号をいうと、他の会員にはどのジョークか分かるので、みんな笑うのである。

 

【10/10追記】

 「ジョーク作家クラブ」のジョークには二つの結末があります。

 気になる人は、「スマリヤンゲーデル・パズル」を読んでください。