眠り姫問題をとにかく数えて解く ― 頻度主義と頻度主義とは異なる何やら良くわからない主義

 私の知る限り、ある出来事が起こる確率とは、「ある出来事の数」/「すべての出来事の数」です。なお、条件付確率では分母が「条件を満たすすべての出来事の数」になります。

 確率の和や積の法則を使って考えるより、多数回試行をして、これらの出来事をとにかく数え上げて、最後に割り算して確率にした方が、圧倒的に分かり安くなります。

分かり安いだけでなく、計算する確率の解釈が明確になります。人によって違う解釈をしている場合、その違いも明確にわかります。一人の人間で異なる解釈をしてしまい混乱することも少なくなります。

 ということで、モンティホール問題と眠り姫問題の多数回試行を数えると、次のような表で表せます。

 モンティホール問題では、a,b,cの三つのドアのうちの一つが当たりです。300回試行すると、それぞれのドアが当たりである数は、どれも100回です。従って、aを選んだ場合の当たりの確率は、100/300=1/3です。問題が問うているのは、回答者が選ばなかった2つのドアのうち、外れドアを出題者が開けた場合、開けなかったドアに選択を変えた場合の当たりの確率です。表に示すように、aが当たりの場合は、変えれば当然100回全部外れです。bが当たりの場合は、変えれば、100回全部当たりです。Cが当たりの場合も同じです。従って、変えた場合の当たりの確率は、(100+100)/(100+100+100)=2/3となります。

 重要なのは、出題者が必ず外れドアを開けることです。これは、結局、回答者が2枚のドアを選び、出題者がそのうちの外れドアを取り除いてくれるのと同じです。出題者が適当にドアを開き、たまたま外れドアだった場合は全く違ってきます。この場合は、出題者が当たりドアを開ける可能性もあり、外れドアを開ける数は100回の半分の50回しかありません。従って、2番目の表のようになり、選択を変えた場合の当たりの確率は、(50+50)/(100+50+50)=1/2です。これは、出題者がたまたま外れドアを開けた場合の条件付確率ということになります。モンティホール問題を紹介しているものの中には、この重要な点が曖昧なものがあって、混乱を引き起こしています。

 眠り姫問題では、200回試行すると、表と裏が100回ずつでます。表が出た100回のうち、月曜日は100回目覚め、火曜日は1回も目覚めません。また、裏が出た100回のうち、月曜日も火曜日も100回目覚めます。従って、目覚めた場合に表である確率は、100/(100+100+100)=1/3です。なお、月曜日に表である確率は、100/(100+100)=1/2です。

 眠り姫問題の巧妙なところは、目覚めていることが条件ではないようにカムフラージュされていることでしょう。あるいは、「目覚めている場合に表である条件付確率」と明確には述べていないので、表が出る事前確率を尋ねられたと解釈することも可能な曖昧な質問になっています。しかし、目覚めた眠り姫が「今日は、火曜日である。表である確率は」と尋ねられたら、表である事前確率を尋ねられたと解釈する人は稀だと思います。それからすると、オリジナル問題も、目覚めた場合の条件付確率を尋ねられたと解釈するのが自然だと思います。

 違う解釈をしているなら、答えが違うのは当然です。更に、相手も同じ解釈をしているとお互いに思い込んでいれば、論争に決着がつくはずもありません。また、1人の頭の中で異なる解釈が入り混じっていれば、パラドクスに見えてきます。このような混乱を多数回試行の数を数えることで避けることができます。

 ところで、確率統計の世界には頻度主義とベイズ主義があるという説明があります。これが、私には、全く理解できません。眠り姫問題も計算機を使って多数回試行すれば1/3という答えが出てきますが、それは頻度主義で考えているからそうなるのだと説明を見たことがあります。異なる考え方をすれば、そりゃあ違う答えになるだろうとは思いますが、それが一体何を表しているのか私にはさっぱりわかりませんね。単に事前確率を考えている場合が多いようですが。