数学オリンピックで14,15歳向けに出題された論理パズル問題が難問すぎて脳がパンクしそう
アルバートとバーナードは，シェリルと友達になったばかりです。シェリルの誕生を２人は聞きましたが，彼女は１０の日にちを候補としてあげました。・5月15日，5月16日，5月19日
・6月17日，6月18日
・7月14日，7月16日
・8月14日，8月15日，8月17日それから，シェリルは，アルバートに「月」だけを，バーナードに「日付」だけをそれぞれ教えました。
アルバート「僕はシェリルの誕生日を知らないけど，バーナードも知らないよ」
バーナード「僕はシェリルの誕生日を知らなかったけど，今は知っているよ」
アルバート「それなら，僕もいつだか知っているよ」
シェリルの誕生日はいつでしょうか？
この問題は，「帽子の色当てクイズ」と同種の推論パズルですね。
共通した特徴は，「「パズルの登場人物がパズルが解けなかった」という情報を得た別の登場人物がパズルを解いた」，ということから回答者が推理するというややこしい手順です。さらに，登場人物は完璧な推論をするという前提があります。完璧な推論をするという前提に私は釈然としないものを感じます。そんな前提は現実には成り立ちませんからね。しかし，完璧な推論をするＡＩにやらせたらどうなるでしょうか。2番目のリンク先のＱ５８の場合，依然として釈然としません。この問題では，3人の人質が自分以外の人質が推論できなかったという事実から自分の帽子の色を推論します。一人の人質が先に推論してしまえば，残りの二人はもう推論できません。従って，3人が推論できるためには。3人の推論が同時に完了する必要があります。人質をＡＩに置き換えても，３つのＡＩが全く同じ推論速度を持つという前提が必要になります。これも非現実な前提です。
では，他の問題や，最初のリンク先の問題ならどうでしょうか。この場合は推論を一人ずつ順番に行うので，それぞれのＡＩは同じ性能でなくても構いません。よって，帽子の色や誕生日を現実にも推論できそうです。
ＡＩも故障するので，完璧な推論というのは現実にはありえませんが，人間の場合より釈然としない感が薄らぎます。パズルは誰でも解けるようではつまらないもので，頭を悩ます難問こそ面白いものです。ところが，パズルの設定の中に，パズルにやすやすと正解を出す人間が登場するので，妙な違和感を感じるんですね。人間を，高性能のＡＩに置き換えることで違和感はかなり解消されます。
さて，先にバーナードに質問した場合を考えて見ると面白いことになります。18日か19日だった場合，バーナードは「僕は知っているけど，アルバートは知らないよ」と答えます。月だけで分かるケースはないからです。次にアルバートに尋ねると，「最初知らなかったけど，今は知っているよ」と答えます。バーナードが知っているということから，18日か19日と分かり，5月と教えられていたのなら5月19日ですし，6月と教えられていたなら6月18日です。しかし，回答者にはどちらなのか分かりません。
では，15日から17日だった場合，バーナードは「僕もアルバートも知らないよ」と答えます。この時点で18日と19日の可能性が無くなったことがアルバートにも回答者にも分かります。従って，次にアルバートに尋ねると，6月だった場合は17日に決まりますので「知らなかったけど，今はしっているよ。バーナードも僕の答えをきいて知ったよ」と答えます。回答者にも分かります。
6月以外の場合は，確定しないので「知らないよ。バーナードもしらないよ」と答えます。面白いのはこの時点で6月の可能性はなくなりますが，5月の可能性は残ることです。19日の可能性は既に消えているので，5月だったとしてもバーナードが分かる可能性はないからです。それ以降は，いくら尋ねても答えは分かりません。
よって，元の問題と同じ7月16日が答えだった場合の経過を記述すると次のようになります。
0. バーナード「僕はシェリルの誕生日を知らないけど，アルバートも知らないよ」
1. アルバート「僕はシェリルの誕生日を知らないけど，バーナードも知らないよ」
2. バーナード「僕はシェリルの誕生日を知らなかったけど，今も知らないよ」
3. アルバート「それでも，僕はいつだか知らないよ」
元の問題は次の通りです。
1. アルバート「僕はシェリルの誕生日を知らないけど，バーナードも知らないよ」
2. バーナード「僕はシェリルの誕生日を知らなかったけど，今は知っているよ」
3. アルバート「それなら，僕もいつだか知っているよ」
元の問題に「0.」の質問を追加して，情報が増えたようでいて，知ることが出来なくなってしまいました。5月19日か6月18日だった場合も，回答者にはどちらか分かりません。
