「眠り姫問題」の分かりやすいバージョン(追記あり)

  • 解決したみたい

眠り姫問題」なるものを最近知りました。ざっとネットで見ただけですがどうも未解決の難問らしいです。実際に私も混乱してしまいましたが数日考えていたら分かったような気がしてきました。未解決の問題を自分が解決出来る筈がないのでどこか勘違いしている可能性が高いですが、あまりにも自分自身の疑念がなくなったので説明します。間違いの指摘、歓迎します。

 

骨格は単純ですが、いろいろ混乱させる仕掛けがある問題だと思いました。問題は以下の通りです。三浦俊彦『多宇宙と輪廻転生』の記述です。(この本は読んでいませんけど。)

 

 日曜日に、ある実験が始められる。まず、あなたは眠らされる。そのあとフェアなコインが投げられ、表か裏かによって、次の二つの措置が選ばれる。

場合A:表が出た場合 - あなたは月曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、ずっと眠り続ける。

場合B:裏が出た場合 - あなたは月曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、火曜日に一度起こされ、インタビューされ、また眠らされ、ずっと眠り続ける。眠りは記憶を消すほど深いので、目覚めたとき月曜か火曜かはわからない。

いずれの場合もあなたは、実験の手続きについてはすべてわかっているものとする。目覚めたときに自分が月曜にいるか火曜にいるか、そしてコインは表だったのか裏だったのかがわからないだけである。

ちなみにコイン投げがなされるタイミングについては融通が利く。コイン投げは、あなたが最初に起こされる前でも、月曜にあなたが目覚めた後でも、問題の論理構造は変化しない。

さて、あなたへのインタビューは次のようなものである。

問1:「いまは日曜日、実験開始直前である。場合 A である確率は?」

問2:「さあ、あなたは目覚めた。場合 A である確率は?」

問3:「さあ、あなたは目覚めた。今は月曜日である。場合 A である確率は?」

このうち問2と問3が「眠り姫問題」である。

  

 直観的に、問2も問3も1/2だと思いました。しかし、簡単な計算をすれば分かりますが問2が1/2だと問3は2/3になってしまいます。また、問2が1/3だと、問3は1/2になり、それが正しいような気もしてきました。いろいろ考えていると1/3と1/2でフラフラと二転三転し混乱してしまいました。

 

 この種の問題では極端な例を考えるのがヒントになる場合があります。この問題では裏の場合、目覚めるのは2回ですが、これが100回だと考えてみました。それだと裏の確率が高そうな気がしてきました。更に極端に、表では目覚めないのなら、表の確率は明らかにゼロです。目覚めたという条件での表の確率を問われているにもかかわらず、最初の直観は、無条件(問1の場合)の確率に引きずられていたようです。

 

 この問題は、表がでて月曜日に目覚める確率はいくらかという問題と同じと解釈できます。この場合は、実験開始前に質問でも構いません。起こりうる事象は、①表が出て月曜に目覚める場合、②裏が出て月曜日に目覚める場合、③裏が出て火曜日に目覚める場合の3つです。そしてその可能性は総て同じはずです。何故なら、コインの表裏は同じ確率なので①と②は同じです。②が起こった場合は必ず③も起こり、①が起こった場合は起こりえませんから②と③も同じです。従って問2は、すべて同じ確率で1/3です。

 

 更に言い換えると、表が出て目覚める回数と裏が出て目覚める回数のどちらが多いかになります。当然前者1回、後者2回ですが、前述のようにこの3回の可能性は同等なので、目覚めた場合に表である確率は1/3になります。

 

  • 私が混乱した原因

 最初にこの問題を考えた時に混乱したのは、問2と問3は別の問題なのに、表月、裏月、裏火の確率は両問題で共通と考えてしまったためです。3つの事象の可能性は同等なので、その比率ならば1:1:1と両問題で共通です。問2は2日間でありうる3つの事象について考えているので、3つの確率の和が1となり、それぞれの確率は1/3になります。一方、問3は、月曜日の1日にありうる2つの事象について考えているので、2つの確率の和が1となり、それぞれの確率は1/2です。違って当然なのに同じにならないのは矛盾だと混乱してしまいました。

 

 少し補足しますと、裏月と裏火に目覚めるのは背反排反事象ではなく、裏が出れば必ず2回、目覚めますから、3つの事象の和は1にならないのではないかという疑問を持ちました。裏月と裏火は二つでワンセットの事象として考えないといけないのではないかと。しかし、それは裏の確率であり、結局のところ問1を考えていることになります。

 

 問2と問3で質問されているのは目覚めた時に表である可能性です。目覚めた時に月であり火でもあることはあり得ないので、背反排反事象です。目覚めた時に表であるのは月しかありませんが、裏であるのは月と火の2回の可能性があります。

 

 記憶が消えるというのが混乱を招く原因かもしれません。実は「表が出て目覚める回数と裏が出て目覚める回数のどちらが多いか」という言い換え問題では、この条件は不要です。ただし、曜日が分かると排除される事象があるので確率は変わります。実験前に質問すれば確率を尋ねる眠り姫問題と同じになります。

 

 それにしても、面白い問題だと思いました。自分が如何に思い違いをするかを痛感させてくれる問題です。(まだ、思い違いしているかもしれませんが)最初は、条件が不明確な問題ではないかと疑いました。記憶が消える薬などというガジェットが出てくるからです。また「人間原理」とも関わる哲学的問題ではないかと大げさに考えたりしました。でも関係なかったみたいです。

 

  • 分かりやすいバージョン

さらに納得感を得るために、分かり安いバージョンを考えてみました。

 

日曜日に、ある実験が始められる。フェアなコインが投げられ、表か裏かによって、次の二つの措置が選ばれる。

場合A:表が出た場合 -月曜日に赤いカードを月曜日箱に1枚入れる。

場合B:裏が出た場合 -月曜日に青いカードを月曜日箱に1枚入れ、さらに火曜日に青いカードを火曜日箱に1枚入れる。

水曜日に月曜日箱と火曜日箱のカードを混ぜて水曜日箱に入れる。

 

さて、あなたへのインタビューは次のようなものである。

問1:「いまは日曜日、実験開始直前である。場合 A である確率は?」

問2:「水曜日箱から1枚取り出した。赤いカードである確率は?」

問3:「月曜日箱から1枚取り出した。赤いカードである確率は?」

 

 

 このバージョンとオリジナルは違うと言われるかもしれません。特に、「問2と問3で「場合Aである確率」ではなく「赤いカードである確率」を質問されることです。これに本質的な違いがあるのでしょうか。私はそうではないと思います。むしろ、オリジナル問題の方が、問1と問2、3の違いを分かりにくくしているのだとおもいます。

 

 そこで、オリジナルと分かりやすいバージョンを合体してみます。基本はオリジナルの実験を行います。あなたが受けるインタビューもオリジナルと同じです。ただし、あなたに分からないように実験者が箱にカードを入れます。つまり、記録を残すわけです。このバージョンの良い所は答え合わせができることです。あなたは確率問題が得意ではないのでインタビューに完璧に答えることはできないかもしれませんが、繰り返し実験を行い、箱にカードが十分に溜まった頃合いに枚数を数えれば確認できます。

 

(追記)

遅読猫さんから誤字のご指摘があり修正しました。 
 (追記2)03/13

 1日も経ちませんが、分かりやすいバージョンには二つのパターンがあって、オリジナルバージョンがそのどちらに対応しているかはっきりしないことに気づきました。

①1回の実験の後に箱から1枚を抜き出す。箱の中は1枚の赤札か2枚の青札かでそれぞれの確率は1/2なので、赤札を抜き出す確率の期待値は1/2

②多数の実験の後に、札が累積した箱から1枚を抜き出す。箱の中の赤札と青札の割合の期待値は1対2なので、赤札を抜き出すの確率の期待値は1/3。

 

箱の中は確定しておらず、箱から抜き出した1枚が赤札である確率も確定していないので、「確率」ではなく「確率の期待値」と書きました。

 眠り姫問題は①なのか②なのか、はっきりしないあいまいな問題という気がしてきました。スッキリ度が減少しました。