抗精神病薬ゼプリオン使用者85人が死亡
厚労省に要望書を提出 地域精神衛生保険機構
https://www.comhbo.net/?page_id=10386
2013年11月に発売された抗精神病薬ゼプリオン使用者の85人が死亡したそうですが,これだけでは,多いのか少ないのか分かりません。また,リンク先には他の薬との死亡者の比較の表やグラフが示してあります。一見,ゼプリオンが多そうですが,使用者が多いだけかもしれませんので何とも言えません。
そこで,ゼプリオンで検索したら,1年半前の2014年10月の記事が見つかりました。そこでは比較できる数字を出典を明示して引用していました。
統合失調症治療薬ゼプリオンは安全なのか?
http://seseragi-mentalclinic.com/xeplion2/
引用されている数字は以下の通りです。
・使用者1万人,1年間当たりの死亡者の他の薬との比較
ゼプリオン 64人
ジプレキサ 175人
セロクエル 115人
リスパダール 190人
エビリファイ 230人
・統合失調症治療薬を服薬している群と服薬していない群を比較した試験(1万人,1年間当たりの死亡者)
抗精神病薬(*)を使った統合失調症患者さん 205人
偽薬(プラセボ)を使った統合失調症患者さん 810人
二つの記事から受ける印象は全く違います。どちらの記事も嘘は書いていないという前提で読んでも,地域精神衛生保険機構の記事では,問題があるのか無いのか判断出来ません。「85人が亡くなっても社会問題にならないというのは、なぜなのでしょうか。」と嘆いていますが,85人という数字だけでは社会問題としてよいのかどうかわかりません。日本の薬の副作用による死者数をアメリカの値から推計すると4.3万人だそうです。85人以上の死者をもたらして社会問題になっていない薬は他にも沢山ありそうです。
また,薬毎の副作用死の調査もあり,5年間で137人というのがあります。これは因果関係が否定できないもので,因果関係が不明なものでは200人以上の薬がいくつかあります。
過去5年間の副作用による医薬品別死亡症例数が公表
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100811.html
結局,1年半前の状況では特に危険とは言えないようです。とはいえ,その後状況が変わったため,地域精神衛生保険機構は厚労省に要望書を提出したのかも知れません。実態は分かりませんが,手元の情報だけから判断してみます。2014年の記事には,一時ゼプリオンの使用量は減ったけれども,以前の状況に戻って来たとあります。そこで,現在でも1年間1万人ほど使用しているとすれば,26ヶ月で85人の死亡となり,1万人,1年間当たりの死亡者は39人となり,1年半前の32人とさほど変わっていません。
特に状況は悪化していませんが,厚生労働省がブルーレターで適正使用の徹底を求めたにもかかわらず,状況が変わらないというのが問題なのでしょうか。