天にツバする予防

【相模原事件】「戦後最大級の大量殺人」 専門家が語る特殊性
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今までのパターンとは一線を画している、極めて珍しい事件です。 
(中略)
まず、全体状況から対策を考えるべきです。この事件を機に、障害者施設をターゲットにした事件が次々と起こるとは思えません。

凶悪事件が減っているのは、現状で取ることができる治安対策が機能しているからです。事件自体が大きく減っているなかで、最後に残るのはどうしても対策の取りようのない事件になります。

特別な事件を念頭に大規模な治安対策をしてもしょうがないし、屈強な警備員がいても、覚悟を持って入ってくる加害者をどこまで止められるか。

 少し前に介護付特別老人ホームの職員が入居者を屋上から突き落とす事件があったばかりです。そのせいか,障害者の介護という仕事に潜む闇という構造的問題を指摘する向きもあります。しかし,今回の犯人の言動は特異過ぎて,私は共通性を感じません。

 リンク先の石戸諭氏同様に,私も珍しい事件だと思いました。日本の過去の類似事件を思いつきません。同じような事件が頻発するとも思えません。また,対策や予防も難しいと思います。つまり,全く同感です。

 ただ,世間の受け止め方は多少違っていて,なぜ予防できなかったのかという声があります。ありふれた殺人事件ではそういう要求はあまりありませんし,殺人事件をゼロにできるとは誰も思っていません。しかし,極めて稀で奇異な殺人事件になると,何故か非常におそれて,ゼロにできないのかという無茶な声が出ます。何故なのでしょうか。何となく理由は想像できます。

 ありふれた殺人事件は,ありふれた人間が起こします。そして,ありふれた家族や知人による殺人事件が一番数が多いという事実があります。このような犯罪を犯しそうな人を予防拘禁するとなれば他人事ではないと実感できます。なので,予防を唱える人は少ないのだと思います。

 一方,稀で特異な事件の犯人は自分とは人種の違う宇宙人みたいなものです。多くの人にとって,宇宙人は恐ろしいので,予防拘禁にも全然抵抗がなさそうです。徹底的に他人事なのです。そのためか,今回の犯人のような「障害者安楽死思想」を持つ危険人物は予防拘禁しろという意見もちらほら見かけます。

 では,「障害者安楽死思想」を持つ人物は,殺人事件を犯す可能性が高いのかというとそんな相関はありません。仮に相関があったとしても,相関係数1はあり得ないので,予防拘禁なんてできません。もし相関で予防拘禁するなら,優生思想や精神病性障害という他人事だけじゃすまなくなります。凶悪犯罪との相関が高い代表は男性です。

 実は,男性を持ち出すまでもなく,他人事じゃないのです。なぜなら「障害者」には精神病性障害者も含まれます。従って,「障害者安楽死思想」を持つものは予防拘禁せよという思想も「障害者安楽死思想」に極めて近いといえます。まさしくブーメランです。