危険の印象

山で死ぬ人と死なない人を分かつのは何かについて考えてみた : 超音速備忘録
http://wivern.exblog.jp/25777842/

ハイマツの小さな茂みのすぐ横に軽トラックほどの岩が露出しており、「ああ、アレにぶつかるのはやめてほしいな」と思って見ていたのですが、
ものすごい音ともに最初の男性の頭が岩に当たって、身体が左右逆に反転するのが見えました。そして、尾根の急斜面の向こう側に消えていったのでした。

 今年のGWは山の事故が多くて,ニュースを見る度に怖さを感じました。リンク先のブログを読むと,雪山の危険がヒシヒシと伝わって来ます。では,GWは山なんか登らずに観光地にでも行った方が良いかというと,そうでもありません。例えば交通事故の死者は減っているとはいえ非常に多いです。ということで,登山事故と交通事故の死者を比較してみました。

 登山事故の死亡者は概ね,毎年300人です。

  H26登山事故統計
  https://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki/h26_sangakusounan.pdf

 先ずこの段階であれっと思いました。平均すると月に25人ほど死亡事故が起きているのです。GWの事故が盛んに報道されましたが,特別多いというわけでもなさそうです。普段は事故があってもあまり派手に報道していないだけなんですね。それは,さておき,交通事故との比較のため事故率を計算します。

 登山人口は,800万人程度です。これから,登山人口10万人当たりの死亡者を計算すると,3.75人となります。

  登山人口推移
  http://www.env.go.jp/nature/report/h26-03/03_chpt3-1.pdf

 次に交通事故の死亡者は,人口10万人当たり3人程度です。ただし,全人口当たりですので,運転免許保有者当たりに修正すると,8千万人当たり4000人なので,おおよそ10万人あたり5人となります。この数字だけから判断すると,行楽地に車で出かけるより登山していた方が安全そうですね。の方が危険ですが、それほどの差はありません。平成20年頃はほぼ同じで,それ以前は交通事故の方が危険だったと言えそうです。

  図録 交通事故件数・死者数の推移
  http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6820.html

 では,家でゴロゴロするに限るかというと,それも怪しいのです。家の中にも危険が有ります。転倒や転落による死亡は意外に多く,近年は交通事故に匹敵しています。平成20年の厚労省の統計では,交通事故7499人に対して,転倒・転落は7170人とほぼ同等です。この転落・転倒には登山や建設現場の業務事故も含まれていると思いますが,業務上の死亡者は1000人程度なので,その内の転落・転倒は半分も無いと思われます。

  不慮の事故による死亡の年次推移
  http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/furyo10/01.html

 かなり大雑把で不正確な見積もりですが,報道から受ける危険性の印象と実際はだいぶ違うようです。雪山で滑落して頭を岩に強打して死亡と聞くと,背筋が寒くなるインパクトがあり,恐ろしく危険な印象を受けます。でも,家のお風呂で滑って床で頭を打った程度でも十分死にます。何処にいても安全には注意しましょう。

【5/12修正】
 交通事故は歩行被害者も含まれますので,ドライバー10万人当たりではなく,人口10万人当たりのほうが妥当だと思いますので修正しました。
 なお,登山人口の全員が常に登山しているわけでもなく,ドライバーが常に運転しているわけでもありません。従って,正確には,その行為を行っている時間当たりで比較するべきかと思います。労働災害の強度率(延労働時間当たりの死傷者数)のようなものがあればよいのですが。