意味の違い

 力 Fを、Δt秒間加える作用を「力積」といい、その大きさは,I=F×Δt です。

 この際,力Fを左側に,時間Δtを右側に書くことが多いですが、ルールはありません。順序を守らなければ、「力」と「時間」の意味を理解していないとみなす教育論も聞いたことがありません。

 「力」が掛けられる量で、「時間」が掛ける量であって、「時間」に「力」を掛ければ、力積とは異なる物理量になってしまうと教える先生もおそらく存在しません。計算結果が同じだからといって、意味が同じとは限らず、意味の違いの理解が重要という説も見かけません。

 意味と言えば、「力」と「時間」は明らかに意味が違います。その違いを理解するのは重要ですが、力積を学ぶような段階で、理解していない人がいるとは思えませんし、「力」に「時間」を掛けたものと、「時間」に「力」を掛けたものの意味は同じです。

 しかし、掛け算を習う段階の子供は、「お皿の上のミカンの個数」と「ミカンの乗っているお皿の枚数」の意味の違いを理解していない、と考えてる先生もいます。そこまで、子供を疑う必要があるのでしょうか。私は教育現場を知りませんので絶対いないとは言いませんが。ただ、子供の理解力を疑う前に、子供が分かっていないことを自分が把握しているのか疑った方がよいのではないでしょうか。

 「「力」と「時間」の意味は違う」と「「力」×「時間」と「時間」×「力」の意味は違う」の意味は違います。「力」と「時間」の意味が違えば、「力」×「時間」と「時間」×「力」の意味も違うという論理も成り立ちません。

 面白いと言っては何ですが、「AとBの意味の違い」を強調する人が、「AやBの意味とA×BやB×Aの意味の違い」を理解していないようにみえます。