消えてしまう職業

あと10年で消えてしまう職業が判明…弁護士や警察などー2014年11月8日 6時0分 現代ビジネスー
http://news.livedoor.com/article/detail/9447763/

 別にロボットは職業を奪いません。ロボットと人間が競争しているのではなく,ロボットを使う人と使わない人が競争しているのです。職業を奪うのは別の人間です。別の言い方をすれば,技術革新で効率的な職業形態が出現すれば,競争力のない古い形態の職業を続けるのは難しくなると言うだけの話です。現代の日本で江戸時代の木版画印刷の出版をするのは殆ど不可能です。現代日本では木版画出版という職業は殆ど絶滅しています。

 この様なことは,道具の技術革新だけに限らず,交易でも起こりえます。経済学の比較優位といわれる現象です。

ー「繁栄」マット・リドレーより引用ー
 彼(アダム)が釣り針を作るのには3時間かかるが,魚を1匹釣るのには4時間かかる。オズはわずか1時間で魚を1匹釣れるが,器用な彼にしても,釣り針を一つ作るのに2時間かかる。もしそれぞれが自給自足でいくとしたら,オズは3時間(釣り針を一つ作るのに2時間,魚を1匹釣るのに1時間),アダムは7時間(釣り針を一つ作るのに3時間,魚を1匹釣るのに4時間)働くことになる。もし,オズが魚を2匹釣り,1匹と引き換えにアダムから釣り針を一つ手に入れれば,2時間働くだけで済む。もしアダムが釣り針を二つ作り,一つで魚1匹をオズから買えば,6時間働くだけ済む。二人とも,自給自足のときよりも楽ができる。二人とも,1時間の余暇が手に入る。

 オズは釣り針もアダムより効率的に作れますが,自分で作るよりも自分は釣りに特化して,アダムの作った釣り針と交換した方が生産性が上がります。このことから分かる様に,オズとアダムは競争しているのではなく,協力し合って生産性を上げているのです。アダムとオズという個人対個人ではなく,アダム族とオズ族という集団対集団の場合でも交易は族間の競争ではなくて,協力関係です。競争をしているのは,アダム族の魚業者とオズ族の漁業者あるいは,アダム族の魚輸入業者という個々の業者です。例えば,アダム族の中で自ら釣った魚を販売するアダム1よりも,オズ族と交易して得た魚を販売するアダム2の方が,安い価格で売ることが可能になります。従って,アダム族の中で漁業を行うのは経営的に苦しくなります。アダム1は競争にまけて転職せざるを得ないかもしれませんが,アダム族全体は交易によって利益を得ています。

 魚を農産物に置き換えると現実の問題になります。この場合も,日本と外国が競争しているのではありません。日本の農家と,外国の農家,或いは日本の輸入業者が競争していると考えるべきです。輸入業者は外国の農家というロボットを使うことで,圧倒的に優位に立っているので,関税というハンディを付けるべきか否かが論争になっているわけです。農産物自由化に付いては別エントリーで触れましたので,ここでは述べません。

ー自給自足はつらいー
http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20140509/1399631385

 ただ,日本と外国が競争しているのではないので,日本の農家が絶滅しても日本が絶滅するわけではありません。交易や技術革新のため,絶滅した職業形態はいつの時代でもあります。別に今更のことではありません。