根は同じー社会的動物

何人かの昼食で,注文するとき,他の人の注文に合わせてしまうことが良くあります。「俺も,それ」という案配です。違うものを注文すると,出てくる時間が違うなどという理由もありますが,同調傾向があるためだと思います。

 「予想どおりの不合理」(ダン・アリエリー著)という行動経済学を紹介する本に,これと正反対の実験が載っていました。アメリカで同じような状況になると,人とは違う注文をする傾向が強いそうです。日本の「同調性欲求」と反対の「独自性欲求」があるからという説明です。

 なんとなく,独自性というと他者の影響を受けないことのように思えますが,実はアメリカ人も他者の影響を受けているのでした。他者の注文が分からない様にした場合よりも,分かる場合の方が注文がバラバラになるそうです。アメリカの社会規範として「独自性」が要求されるため,本当に食べたいものを我慢しても,「独自性」があるという評判を得ることを重視するということらしいです。

 こういう話を読むと,人間はあまり変わらないと感じます。人間は社会的動物なので,社会規範を重視するというのは,万国共通なのですね。具体的な社会規範は国によって違うので,現象としては全く正反対のことは起こるわけですが,根は同じというわけです。

 なお,この本はベストセラーだそうです。私は文庫本で読みましたが,確かに面白い実験が沢山,紹介されていて読みやすい本です。著者のとにかく実験で確かめるという徹底した態度はなかなかのものだと思いました。