うんこの行方

バッタもん日記
うんこと食料自給率 −物質循環−
http://d.hatena.ne.jp/locust0138/20130821/1377085971

 以前,上記記事に疑問のコメントをしましたが,その後もう少し考えて見ました。
 locust0138さんの意見を要約すると,「うんこは輸出や自然循環で海外に移動しないので,うんこの原料の食物は輸入せずに,国内生産しなければならない。さもなければ,うんこが貯まる一方である。」になるかと思います。

 要するに出口がないから入り口を閉じなければパンクする。食物循環は国内で閉じている必要がある。という意見かと思います。

 出口がないというのは,うんこは国内栽培の肥料としてしか循環しないので,国内栽培しないと、溜まる一方だという理屈ですが,これが疑問です。うんこ(有機物)は微生物等によって分解されます。人工的な下水処理もあれば自然の働きもあります。その結果,水,二酸化炭素チッソ,リン酸などになり,空気中,水中(海中)に移動しますから,国外に移動するのではないでしょうか。肥料に加工して人為的に輸出しても良いです。 
 
 勿論,移動量には限度があるはずで,特に海中に流れ込む分は富栄養化という汚染をもたらしますし,大気汚染の可能性もあります。従って,このような自然循環の容量を定量的に把握して,もし限界に達しているのであれば,対応が必要です。

 以上のようなことから,出口が無いのではなく,出口が狭いというのなら,話は分かります。狭いとは程度問題ですから,定量的に説明が必要です。

 例えば,畜産業のうんこは限界に達しているようで,確かに狭そうです。肉は非常に効率の悪い食品で大量の飼料の一部が肉になるだけで,大量の(畜糞)廃棄物を発生します。従って,廃棄物の問題だけで考えると,肉の国産はやめ,輸入肉にした方が良いことになります。

 一方,家畜以外の人間のうんこは下水処理場で処理され,相当量が建材や肥料にリサイクルされています。処理仕切れないものが汚泥として残り,最終処分つまり埋立てたりされます。これが限界に達しているかどうかですね。

 仮に限界に達しているとしても,下水に流す分を減らし,田畑の肥料として使えば,最終処分量がへるのでしょうか。ここで,人間が食べる量が同じならば,輸入品でも国産品でもうんこの量は同じだということに注意する必要があります。

 昔のようにうんこをそのまま畑に蒔くのは衛生面で不可能でしょう。結局,肥料に加工する必要があり,下水処理で肥料にしている現状と大して変わらないのではないでしょうか。リサイクルした肥料を国内で使用するか輸出するかの違いだけになります。

 ですが,仮にうんこのまま肥料にする場合も考えて見ます。自給自足の場合と100%食品輸入の場合を比較します。(図参照)自給自足といっても,肥料は輸入します。現状の生産量でも肥料は輸入しているのですから,自給自足では肥料はもっと必要になります。



 自給自足の場合の国全体の物質収支は,
①+②+③=④+⑤

 食品輸入の場合の国全体の物質収支は,
①+⑧+⑦=⑩+⑪

 自給自足の場合の人の物質収支は,
①+⑥=④+⑦

 自給自足の場合の畑の物質収支は,
②+③+⑦=⑤+⑥

 食品輸入の場合の下水処理の物質収支は,
⑦+⑨=⑩+⑪

 また,人の食べる量は同じなので,
⑧=⑥

 以上から,次の関係が導かれます。
⑤ー⑪=②+③−⑥−⑨+⑩

 この式から,自給自足の最終処分量⑤と100%輸入の最終処分量⑪の大小関係は,一概には言えないことが分かります。直感的に,食品を輸入している方が,廃棄物は多くなるような気がしますが,それは,畑での自然循環の取り込み量②,輸入肥料③,輸出肥料⑩などを忘れているからです。

 大ざっぱな見積もりとして,畑で生産を行う場合,作物生産に伴い必ず廃棄物が発生します。食品を輸入すれば,その生産過程での廃棄物は輸入されませんから,食品輸入の場合の最終処分量⑪の方が少なくなりそうです。食品輸入の場合は,下水処理場でうんこの処理を行いますが,自給自足では畑で行われます。どちらも微生物の働きによるものですから,その過程での廃棄物の量はそれほどの違いは無いと思われます。結局,国内作物生産に伴う分だけ自給自足の方の廃棄物が増えるのではないでしょうか。これは,畜産業と同じ問題を抱えているということですが,肉生産より植物生産の方が遙かに効率的で廃棄物は少ないので,結論は何とも言えません。

 結論を出すには,物質循環の計算が必要ですが,総てを行う必要は無く,自給自足の場合の畑と食品輸入の場合の下水処理の物質循環を比較すれば十分です。素人の私には無理ですが,専門家なら可能なレベルに思えます。既にこの程度の考察は誰かが行っているかもしれません。