「不快」大好き

矢口真里ら出演の自虐ネタカップヌードルCMが放送中止 公式ホームページでお詫び

 CMはビートたけしが学長を務める大学で、矢口真里小林幸子新垣隆氏など世の中を騒がせた人たちが自虐ネタを披露するという内容。若者に失敗から這い上がる力を伝えたいとの意図があったものの、不倫をネタにする矢口の姿などに批判の声が上がっていた。
(中略)
 一方「今回のCMのテーマであります、『CRAZY MAKES the FUTURE.』のメッセージを伝える『OBAKA’s UNIVERSITY』シリーズは、若い世代の方々にエールを贈ることが主旨」であるとし、今後もこのテーマに沿って引き続き広告を展開していくとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160408-00010000-tospoweb-ent

 なんだか面白い展開ですね。CMである以上視聴者に不快感を与えた時点で失敗ですが,単発の失敗は想定内という印象です。シリーズとしては展開していくそうですから。「失敗から這い上がる」のがテーマというのも,第一弾CMの失敗から這い上がり,第2弾,3弾とシリーズは続くことを暗示しているような,いやそれは考えすぎ。

 CMへの苦情というのは,私には理解しがたいところがあります。実害を受けたのでもないのに,苦情を言うことに楽しみを見出している趣味という感を受けます。暇なんで新聞の読書欄に投書しているような感じ,あるいはこのようなブログを書いているという感じといいましょうか。あ,理解しがたいと言いながら,同種の行為として自分のブログを挙げているのは矛盾していますね。まあ,不快なCMが視聴者の人生に重大な影響を与えるとも思えませんから,苦情自体を楽しんでいると感じるわけです。私のブログも何か社会的使命感に基づいているわけではなく,楽しみで書いています。ただ,楽しみの対象は人それぞれで他人の楽しみは理解しがたいこともあるという程度の話です。

 CMが不快なら,その商品を買わないのが一番の効果的な反撃ですが,もともと商品を買っていないひとからクレームが来ても企業には大した打撃はなさそうです。この騒ぎの結果,カップヌードルの売り上げが落ちたりするのでしょうか。しないような気がします。それどころか,苦情の主は再び苦情を言おうとシリーズの次のCMを期待し,なんとなく世間の話題になるけど企業の致命的なイメージダウンにはならなくてと,なんだが日清食品に翻弄されているような感があります。

 不快なものはできるだけ見たくありませんが,不快かどうかは主観的感情です。不快防止法第9条に基づく不快防止法施行令第20条別表1「不快度判定基準」のような客観的基準は残念ながらというか幸運にもと言うべきか存在しません。不快な容姿を晒すことは禁止すると言われたら,私は立つ瀬がありませんよ。世の中には,不快な顔,不快な音楽,不快な文学,不快な絵画などがあふれていますが,違法として排除できる場合は限られています。限られている例外は,公的な機関の発言とか生活に大きな影響を与える場合です。ひょっとしたら,カップヌードルのCMは公的機関の声明なみに影響力があるんでしょうかね。カップヌードルは専売品だったころのお米や塩のような生活必需品なのですかね。

 公的なことでもなく,生活必需品でもない感覚的なことなのに,規制されている珍しいものが一つあります。「わいせつ」です。わいせつの三要件は次の通りです。

通常人の羞恥心を害すること
性欲の興奮、刺激を来すこと
善良な性的道義観念に反すること

 「通常人」なんて主観的なことで規制されては堪らないと,「通常人」かどうか自信のない私は困惑します。別に社会の基盤を揺るがすようなことにはならないから,放っておいてくれという気分になりますが,そうは思わない人もいます。「わいせつ」も「CM」も野放しにすれば,低俗化に歯止めがかからなくなるという心配があるようです。でも,そんな心配するようなことでしょうかね。それに,低俗って皆さん好きじゃないですか。