前例のない事態

 熊本の地震の放送を見ていたら,地震の専門家の方が「本震より大きな余震は起こりません。もっと大きな地震が起こるという,流言飛語が流れていますが惑わされず,冷静に行動してください。」と注意していました。

 ところが,その後16日に震度6強の地震が起きました。そして,気象庁は「16日午前1時25分ごろに起きたマグニチュード7.3の地震が「本震」で,14日の熊本地震は前震であると発表しました。

 地震の専門家は間違ったことを言ったのでしょうか。微妙です。「本震より大きな余震は起こりません」ということ自体は間違いではありません。なぜなら,それが定義だからです。本震がどれであったかは,事後的に最大のマグニチュードであったものとするしかありません。

防災情報のページ 内閣府
http://www.bousai.go.jp/jishin/tokai/word/word2.htm

 しかし,揺れの大きさは14日の前震が最大でしたが,それはたまたまで,本震の方が大きくなる可能性もありました。14日の地震が本震で,かつ被災地の揺れも最大であるという予断を与えたという点で軽率だったといえます。とはいえ専門家の判断は常識的といえば常識的です。震度の最大値は7であり,それが何かの予兆であるとは考えにくいのではないでしょうか。少なくとも経験上は。

 しかし,地震というものは経験やそれに基づく常識を超えるものなのですね。気象庁も前例のない事態だと考えているようです。前例がないとうのは近代の観測史上ということで,その期間は地質年代のスケールからすれば一瞬です。日本沈没は観測史上なかったSFの絵空事ですが,地質年代スケールでは何度も起こっているわけで。