■ 他者の考えの推測

  • 質問が見当たらない

 ウィキペディアの「眠り姫問題」には、眠り姫が受けた質問はまでは書いてありますが、肝心の読者への質問が書いてありません。ツイッターのやりとりで私は「眠り姫は何と答えたかはわからない。自分が眠り姫の立場なら1/2と答える」と揚げ足とりの注釈をつけたことがあります。我ながらクレーマーみたいでした。常識的に考えれば「あなたが眠り姫の立場なら何と答えるか?」と解釈すればよいだけなので、大人げない態度です。ただ、常識的に解釈することは、先入観で解釈することでもあり、その先入観が混乱を引き起こすのが「眠り姫問題」でもあります。

  • 推理クイズ

 ところで、他者の立場になって考えるといえば、そのタイプの推理クイズがあります。有名なのは、帽子の色当て問題です。

  白い帽子3つと赤い帽子2つがある。3人にそこから選んだ帽子を被せる。自分の帽子の色は見えないが、他の2人の色は分かる。3人全員に白い帽子を被せて、自分の色を推理させたら、一人が答えたどのように推理したか?

  この問題は子供の頃に知りましたが、解答を読んでも釈然としませんでした。その推理が、自分以外の者の推理能力を都合よく考えていたからです。自分以外の二人にも適度の推理能力があるけどれも、自分よりは劣っているという何の保証もない前提なので、実際にはそんな推理は出来ないと思いました。

と言いながら、自分が実際にその立場に今なったら「白」と答えます。論理的な推理ではなくヒューリスティックな推測ですので確実に「白」ではなくて「白」の可能性が高いという程度の推測ですが。

私は次のように考えます。

 もし自分の帽子が「赤」ならば、他の2人は「赤」と「白」を見ていることになる。その状況は「白」と「白」を見ている私の状況と違って、多少推理しやすい。なぜなら、その二人にとっては、自分に見えていない二つの「白」と一つの「赤」のうち一つを自分が被っている、つまり「白」である確率は2/3に対して「赤」の確率「1/3」である。ただし、自分が「赤」であれば「白」を被っている者が確実に「白」と分かってしまうので、その可能性は少ない。よって「白」の可能性が非常に高いと推測できるだろう。

 それに対して、「白」二人を見ている私の推測は多少面倒である。見えていない帽子は「白」一つ、「赤」二つなので、私が被っている帽子が「白」である確率は1/3、「赤」である確率は2/3である。しかし、「白」である場合、他の2人にとってその状況は今の私と同じであり、「白」の可能性が高いわけではない。

以上の考察より、出題者が他の2人をえこひいきしたいのでなければ、3人を平等に扱うであろう。故に「白」の可能性が高い。

  私のヒューリスティックな推測とクイズの回答はよく似ています。ただし、私の推測は出題者の心理を勘案した可能性に過ぎないのに対して、クイズの回答は確定的なものという違いがあります。確定的なのは「論理的」に考えたからですが、仮定条件が非現実的なので信頼性は乏しいです。

 さて、推測にしろ「白」の可能性が高いと判断しましたが、前述のように「白」の確率は1/3です。これは、どのように考えればよいでしょうか。と、問いかけるほどの話ではありませんでした。ヒューリスティックな推測では、他者の推理や出題者の心理を勘案していますが、確率は、残り3つのうち1つということを表しているだけです。コインを投げて帽子の色を決めているなら白の確率は1/3です。確率とはそれだけの意味しかありません。難しい手術の成功確率が○○%と言う場合、患者の生きようとする意欲の類は通常は、反映されていません。実際には、患者の意欲は手術の結果に影響すると思いますが。