公設市場と事業者の関係

豊洲市場は大赤字!金融の視点で見える事業面での大問題ダイヤモンド・オンライン

 豊洲市場だから赤字になるんでしょうかね。食品取扱上必要な衛生管理,品質管理を行うのなら,豊洲だろうと築地だろうとどこだろうと維持管理費はかかるような気がしますが。築地市場は必要なことを行っていないから安上がりなだけで,ブラック企業が最低限の賃金を支払わないので黒字になっているみたいなものではないでしょうか。そもそも,ブラック企業体質では問題ありということで,その解消のため豊洲移転ということになったと私は理解していますけどね。

 必要経費が増えるのは社会的要請のレベルが高くなったからで,それに見合うように収入を増やす努力をすべきでしょう。それが見込めないというのであれば,市場の存続意義から見直す必要があるのではないでしょうか。

 もう一点,リンク先の記事に足りないと思うのは,東京都卸売市場という公的な組織の会計問題と市場を利用する卸売事業者の経営の問題の整理です。金融や経営にど素人の私は,市場会計の収支を改善するには,市場の使用料を値上げすればよいと単純に思います。空き部屋が多くてアパート経営が赤字なのではなく,人気の満室物件にも拘わらず,家賃が安すぎるため赤字になっているような状態だからです。しかし,使用料を値上げすれば,市場を利用する業者の経営が多分成り立たないでしょう。特に,債務超過が多い仲卸業者は厳しいことになります。それでは業者が困るというので使用料を安くしているのであれば,業者に東京都が公的に補助している便宜供与めいてきます。民間のアパート経営なら,割り切って家賃を値上げして,支払える入居者に貸せばよいだけで,大家さんが店子の面倒を見るのは落語の世界ぐらいです。

 とはいえ,公設市場には公的な目的があって東京都が運営しているのですから,純然たる民間事業であるアパート経営のように割り切っては考えられないとは思います。卸売業という民間業者の経営に根本的な原因があり,それを支える公的な都の市場の運営に影響しているわけですが,東京都が民間業者の経営まで面倒を見なければならないのはなぜでしょうか。それは,生鮮食品の流通は都民の生活に大きな影響を及ぼす公的な意味合いがあるからだと思います。

 公的な意味合いがあるなら,税金投入も妥当です。特別会計には国の道路特別会計のような裕福なものもありますが,一般会計から繰り入れのある貧乏会計もあります。それが許されるのは,公的な意味があるからで,わずかでも収入があるので特別会計にしているだけだと思います。ならば,東京都卸売市場の会計が赤字になって一般会計から繰り入れしたって騒ぐことはありません。民間業者が行っているとはいえ,卸売業は公益に資するという自負があるなら堂々と権利を主張すればよいでしょう。

 ただ,どうも現状の卸売業者の仕事が本当に公益に貢献しているか疑問なのですね。残念ながら,ど素人の私にはその実態が分からず判断できませんが,鑑札制度などという既得権制度で守られた閉鎖的で不透明な世界という印象を受けます。公設市場が全く不要とは思いませんが,地の利を生かして銀座の高級寿司屋をお得意さんにしているような業者を都が保護しなければならないのでしょうか。銀座の寿司は食えない私は,魚の産地は気にしても,どこの市場を経由したかなんて気にしませんし,商品にも表示してありません。別に市場経由でなくても構いません。

 私の違和感はともかく,都は市場を廃止したり,民間に売り払う気はないようですから,公的な意義があると考えているはずですし,そこで仕事をしている業者も同様でしょう。ならば,都と業者は信頼,協力して都民の台所のために努力すべきじゃないかと思うのですよ。ところが,専門家会議の質疑の様子を見ていると,一部の業者は都を全く信頼していないどころか,いがみ合ってじゃないですか。ならば公設市場なんかに頼らず,場外市場でやって行くという気概があるかというと,そうでもなさそうです。東京都が業者の面倒を見て,お膳立てしてくれて当然だと考えているように感じました。多分,江戸時代から続く歴史や複雑な事情があるとは思いますが,体質改善も必要なのではないでしょうか。経営が順調ならともかく,自分たちだけでなく,公設市場の収支も危うくしているという自覚はあるのでしょうか。危機感をもって真剣に考えている関係者も見かけますが。