知事の仕事を請け負う市場問題PT

 市場問題PTは,かなり奇妙な会議です。通常のこの種の諮問会議は,専門的な内容について,知事に提言する会議です。専門分野でも様々な見解がありますので,多数の委員で検討し,座長がとりまとめ知事に答申します。知事は,答申を参考にして,他の事柄と併せて,総合判断を行い,行政を執行します。

 例えば「専門家会議」は土壌汚染対策という専門分野について提言をします。では,市場問題PTの専門分野は何でしょうか。第1回会議の資料6に示されている検討課題(案)は次の通りです。

1.土壌汚染の安全性
(1)2 年間の地下水モニタリングの結果の確認・評価
(2)その他
2.豊洲市場の施設
(1)施設の安全性
  1)建物の構造計算(コンクリート厚さ、耐荷重、地下空間)
  2)建物の設備等(スロープなど)
(2)施設の機能
  1)交通アクセス
  2)市場内(各街区内、建物間)の導線
  3)市場内の各機能(荷捌き、積み下ろしなど)のスペース
  4)温度管理(コールドチェーン
  5)その他
(3)働きやすい施設
  店舗のスペース、海水の利用、氷製造販売施設の配置、
  電力・コンセントの配置等
(4)豊洲市場の建設費の適正性(材料費、人件費など)
(5)その他(築地市場の現状・応急措置を含む)
3.豊洲市場の事業
(1)業者の負担と事業継続性
    事業者の負担、事業者への支援措置等
(2)豊洲市場の事業継続性
  1)豊洲市場の基本構想、実施計画、将来構想
  2)豊洲市場の経営分析
  3) 豊洲市場建設費の適正性(減価償却など)
  4)市場会計の分析(築地市場、市場会計全体の分析を含む)
  5)その他
(3)その他

 これはもう,特定の専門的な事項について答申する普通の諮問会議とは全く異なります。総合的判断によって移転の是非を判断する知事の仕事まで座長が請け負っちゃってます。小池知事は,行政判断や政治判断を自ら行う能力がないらしく,消費者や住民の意見,あるいは諮問会議の座長に決めてもらっているかのようです。もちろん,優秀な小池知事に判断が出来ないはずは無く,責任回避いや都民への説明のためでしょう。

 このやり方は,しばしば批判される役人の説明のためのアリバイ的諮問会議,すなわち,役人のシナリオ通りの答申を行う会議の少々雑なバージョンと言えます。国の場合,首長である知事のような強力な行政権限が役人にはないため,専門家のお墨付きが必要だという面があります。アリバイ諮問会議といえども,役人は一応,専門家の会議の体裁は整えますが,市場問題PTはその体裁さえとっていません。

 座長が知事になりかわって,各専門委員の見解から総合判断を妥当にしているかというと苦しいです。小池知事の注文が厳しすぎて,無理があるのか,小島座長が勝手にやっているのか知りませんが,全然,総合的じゃありません。

 土壌汚染の安全性については,「専門家会議」の結論によるとしながら,「専門家会議」の市場機能のある地上は安全であるという判断は軽くいなして,「地下は無害化された安全な状態は達成されていない」という市場の食の安全とは無関係なことを報告書案に示しています。

 耐震性などの建築構造の安全性については,建築構造の専門委員が安全性を保証し,安全性に疑問を呈した構造が専門ではない委員は殆ど発言していません。発言したのはその委員が連れてきた説明者でしたが,座長は「議論のありうるところ」という灰色裁定の報告書案を示しました。この議論は委員間の議論ではなく,議員と説明者の議論です。

 施設の機能については,専門家らしき委員がいませんので,建築専門の委員の見解が示されています。

 豊洲市場の事業継続性については,専門委員は一人だけです。事業継続性の資料には唖然としますが,本記事のテーマからは外れますので,一人の見解で大丈夫か,という感想だけ述べておきます。建築関係の委員が何人もいるのに,市場の在り方にとって最も重要そうな経営の専門家は一人なのは何故なんでしょうかね。