築地市場再整備を主張するなら,実現性のある計画を提示して関係業者の合意を得てからにせよ

子宮頸がんワクチン反対のはたとこも元参議院議員は,築地市場再整備を主張しているんですね。ブログを拝見すると,2007から2009年ごろに反対記事が見つかりますが,その後は特に発言は見つかりませんでした。ここにきて,盛土騒動に端を発した豊洲移転延期に悪乗りして,見込みのないことを主張するのは無責任ですが,見込みがあるのでしょうか。また,場外施設の「築地魚河岸」に出店した「山治」を持ち出していますが,「築地魚河岸」は場内市場の豊洲移転に対応して中央区が計画したものです。「ガイアの夜明け」の取材によれば,「山治」の山崎社長はもともと移転には反対だったそうですが,苦渋の選択で豊洲移転に向けて投資を行い,10年以上も準備してきたとのことです。「豊洲ブランドを作る」とも発言されています。どちらかといえば移転延期の被害者じゃないでしょうか。

 重要なのは,東京都の行政問題である築地市場豊洲への移転は決定事項だということです。当然この決定には,業界団体も関わっています。平成11年に築地市場再整備推進協議会において「現在地再整備は困難であり,移転整備へと方向転換すべき」と業界の意見集約され,平成13年に東京都が「第7次東京都卸売市場整備計画」を決定しています。

 その決定にも拘わらず移転が延期されている理由は,土壌汚染対策に疑義が呈されたためで,技術的問題です。私は技術的問題などなく,手続き的問題だと考えますが,仮に技術的問題があったとしても解決可能ですので,現時点で行政決定まで見直すような事態は生じていません。決定に従い移転準備を進めてきた関係者の被害を思えば,できるだけ速やかに移転時期を決定し,移転中止などないこと都知事はアナウンスすべきと思います。しかし,小池知事がはっきりしないため,世間では築地再整備という不可能で無責任な主張や,豊洲市場カジノ転用などというヨタ話が沸いています。驚いたことに,一級建築士でもある市場問題PT委員までがヨタ話を垂れ流しています。

 築地再整備から移転に変化した経緯をみれば,築地再整備はとんでもない難題だったことがわかります。業者の営業に深刻な影響が懸念されて中止になっているのです。東京都卸売市場のページに過去の経緯が説明してあります。

昭和63年  再整備基本計画の策定
       総工費2,380億円を予定
平成3年   再整備工事の着手
平成8年頃  再整備工事の中断営業活動への深刻な影響の懸念から、業界調整が難航
       工事の途中で、工期の遅れや整備費の増大など、様々な問題が発生
       再試算で3,400億円(工事中断まで400億円執行)
平成9年〜 再整備基本計画の策定
       都と業界で、計画見直しのため協議を重ねたが、結論は出ず
平成10年  移転可能性の検討要望
       業界団体から臨海部への移転可能性の調査・検討の要望
平成11年  業界との協議において、移転整備への意見集約
       「現在地再整備は困難であり、移転整備へと方向転換すべき」
平成13年  「第7次東京都卸売市場整備計画」策定

 平成3年に再整備を実際に試みて失敗しており,業界の意見がまとまりませんでした。そのため,東京都は業界団体の意思統一が必要と宣言しています。その後,平成10年に業界団体から移転可能性の検討要望が出されています。しかし,6つある業界団体のうち5つの団体は移転に合意しましたが,仲卸団体は合意せず話し合いを続けていたようです。そのため,移転決定後も計画は進展せず,業界団体から豊洲移転推進の要望書がくり返し提出されています。平成22年10月の要望書には,これ以上の遅滞は経営体力からも限界であること、移転は民主的な手続きで合意形成をはかり業界の意見として取りまとめたことが書かれており,速やかに新市場に着手し予算執行を強く求めているそうです。

 以上の経緯を踏まえると,仮に豊洲移転を中止しても築地再整備は不可能で,放置状態になるでしょう。関係業者の反対でとん挫したのですから。20年も続く再整備を再開しようという関係者はどれだけ存在するのでしょうか。30年もの長きにわたって関係者が大変な努力をして,7回も整備計画を変更して,やっと移転寸前までこぎつけたと思ったら,都知事が変わってこの有様です。関係者の被害を考えると,一刻も早く移転時期を決めるべきではないでしょうか。

 もちろん,重大な食の危険がありうるなら,業者より消費者優先ですから「決まったことだから」と言わずに見直す必要があります。しかし,具体的定量的な危険の指摘はありません。なんとなく危なそうだというイメージだけです。そこで,調べて見ると,まったく心配するレベルではなく,むしろ築地の方が心配です。その心配を現地再整備で解消することが不可能だとわかったからこそ,移転になったのですからね。

 都知事には築地現地再整備が不可能であることをもう一度アナウンスして欲しいのですが,市場問題PTの迷走を見ていると不安になります。いまごろ「市場の在り方」ですからね。30年かけて議論してきたことを,数回の会議で見直そうとは無謀です。わかっていた課題を再度列挙して終わりとなりそうです。

 普通,役人は石橋をたたいて渡りません。手続きに問題があれば杓子定規に手直しを求めます。その結果,事業はちんたらと進まず,緊急を要する事態に対応できないことが多くあります。事業の停滞は大きな被害をもたらしますが,役人自身の財布にはそれほど響きません。それよりも,積極的に関わって責任を問われるダメージが大きいからです。そこを打破するのは,政治家であり権限を持つ都知事のようなトップの決断です。ところが,小池都知事は役人と同じ発想みたいなんですね。文句をつけるだけの評論家,ジャーナリスト的で,事業を進める気があるのかよくわかりません。事業が進まないと被害者が出ます。間接的には死人が出るかもしれません。汚染土壌で死人や病人がでるとは思えませんが。