相対危険度

ニセ科学本」はデータをどう扱っているか?
http://d.hatena.ne.jp/yosikazuf/20150627/p1

 人気者の武田邦彦先生の著書『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』についての簡潔,明快な間違い指摘です。ただ,このうち「(4)グラフの読み方が間違っている」は簡潔すぎてちょっと分かりにくく感じました。飲み込みの悪い私だけの印象かもしれませんが,勝手に補足説明を書いて見ます。

   中年期男女におけるBMIと死亡率との関連(詳細版)
    http://epi.ncc.go.jp/files/01_jphc/outcome/jphc_outcome_d_003.pdf
 グラフを眺めて見ると,縦軸が「相対危険度」となっています。この言葉は疫学の専門用語です。武田先生は素人なので,誤解して間違った解釈をしていますが,私も素人なので武田先生の間違いが瞬時には飲み込めなかったわけです。

 相対危険度とは,危険要因が無い場合の疾病の頻度に対する危険要因がある場合の疾病の頻度の割合です。分かり安く「危険要因」と書きましたが必ずしも有害なものとは限らず,専門的には「暴露」と表現されています。国立がんセンターのグラフで考慮している危険要因は「痩せすぎ,太りすぎ」であって,「喫煙」ではありません。そもそも喫煙の影響を示すグラフではないのですね。それを武田先生は喫煙の影響のように見せかけた,いや誤解したようです。

 グラフは,痩せすぎでも太りすぎでもないBMIが23.0-24.9の基準死亡率に対する他のBMI値の死亡率の比を示したものです。それを全対象者と非喫煙者に分けて2本のグラフで表しているだけです。なぜ分けているかは説明がありませんが,喫煙者と非喫煙者では傾向が少し異なるということかも知れません。あとで,その点についても触れます。

 喫煙者も含む全対象者のの基準死亡率は,非喫煙者の基準死亡率より大きいですが,基準のBMI=23.0-24.9の相対危険度は全対象者も非喫煙者も当然1.0になります。縦軸を相対危険度ではなく,ナマの死亡率にすれば,全対象者のグラフは上に移動し,全域で非喫煙者を上回るでしょう。なお,喫煙を危険要因とした場合の相対危険度は厚生労働省の資料にあります。言うまでもなく喫煙者の死亡率が高く,相対危険度も高くなっています。

喫煙の健康影響について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kaigi/060810/07.html

 ところで,非喫煙者のグラフが全対象者のグラフよりも右下がりになっています。理由を推測すると,喫煙者は,やせ形が多いのですが,同じ体型(BMI)ならば体脂肪率が高いということと関係しているような気がします。死亡リスクに影響するのが体脂肪率だとすると,同じBMI値のやせ形の人では非喫煙者の方がより脂肪が少なく,リスクが増えると考えられます。従って,もっとも健康的なBMI値を基準とするのであれば,喫煙者も含む全対象者の基準BMIはもう少し小さくしても良いのかも知れません。実際にもっとも相対危険度が小さいのは19.0-20.9になっています。