橋下駄

 今朝(4/18)のTV(日テレ)で,阿蘇大橋崩落の現場の映像を見て,アナウンサーが次の様な事を言っていました。

阿蘇大橋は跡形もありません。対岸にかろうじてコンクリート製のハシゲタが残っています。」

 言うまでもなくハシゲタ(橋桁)はキョウキャク(橋脚)の間違いです。「橋脚」の上に掛け渡してあるのが「橋桁」で,それは土砂に押し流されてもう存在しません。

 と,ドヤ顔で指摘している私ですが,実は子どもの頃はこのアナウンサーと同じ誤解をしていました。「ハシゲタ」と聞いて「橋下駄」だと勘違いしていたのです。橋脚を下駄の歯のようにみなした表現だと思っていました。なんとなく似ているでしょう。だとすると「橋下駄歯」とでも言うべきですが,そもそも勘違いですからそこいらはいい加減です。

 また,橋梁関係者ならぬ一般人は橋桁とあまりいいません。単に「橋」といいます。わざわざ「橋桁」というからには,普通「橋」といっているものとは別のものを指しているような印象がありませんか。少なくとも私はそう感じました。別のものとしては,橋脚ぐらいしか目に付きません。斯くして勘違いしたわけです。

 ところで,建築では水平に掛け渡す部材には「梁」と「桁」の2種類があります。建物の平面の短辺方向に懸かっているのが「梁」で,長辺方向が「桁」と説明されることが多いのですが,それだけだと本来の違いが分かりません。彰国社「建築大辞典」には次の様に説明してあります。

はり 梁
古名はうつばりで内張りの意。柱頭の位置にある水平材で小屋組を支えるもの。側柱上にあって垂木を受けるものは特に桁という。元来梁は棟と直角の梁行方向のみしか走っていなかったが,後世構造が発展して桁行方向にも渡されるようになった。・・・

 百聞は一見にしかずで,図を見れば分かる様に,スパンの大きいメインの横架材は梁で断面も大きく目立ちます。古民家などに見られる曲がりくねった大きな部材は梁です。一方の桁は建物外周部の狭い間隔で建てられている柱に掛け渡すものですから,スパンも断面も小さな部材です。そのためか,一般には「梁」という言葉は使われますが,「桁」という言葉はなじみが少ないのでは無いでしょうか。

 ところが,橋梁の世界ではメインの横架材は「桁」と呼びます。橋梁なのに,橋桁とはこれ如何に。「橋桁」を「橋下駄」と思い込んでいたのは私だけじゃないような気がして来ました。

【追記】
 書いた後で検索したら,次の記事を見つけました。私の思いこみと全く同じです。
 
5261「橋桁と橋脚」
http://www.ytv.co.jp/blog/announcers/michiura/2013/10/post-1929.html