有るかどうかわからないのは小さいから

次の記事を読みました。

低線量放射線の健康影響はわかっていない、という話
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140521/1400692437

 scopedog さんは,「わかっていない」とだけ言っていて,どのようなことが分かっていないかについて言及していません。そもそも「わかっていない」のは確かで議論にもなっていません。「低線量放射線の健康影響はわかっていない」という意味は,影響が小さすぎて今のところ検出出来ないという意味なのですが,それを理解されているかはなはだ疑問です。

 例えば,1mmまでしか測れない物差ししかなければ,1mm以下の寸法誤差は測れませんので,1mm以下の誤差が無いかどうかはわかりません。もし,1mm以下の誤差も気にするのなら,更に精度の高い物差しを用意しなければなりません。しかし,1mm以上の誤差が無いことはわかります。

 引用されている「文部科学省委託調査報告書」にも,「統計学的検出力は十分とは言えないので、この対象者について観察期間を更に延長する必要がある。」とちゃんと書いて有ります。つまり,現時点では死亡者のデータが少ないので,影響が有るという結果は得られていないということです。データを増やせば何らかの関係性が見いだせるかもしれませんが,それだけ多くのデータが無ければ検出出来ないほど小さな影響だと言うことになります。

 統計的な物差しの精度はデータの大きさで決まります。血液型と性格の間に関係がないことは統計的に調べられています。しかし,データが膨大になれば「有意」な関係がいずれ見いだせます。ただ,その関係は極めて微弱で,実際上何の意味もありません。

 低線量放射線の健康影響も実際上何の意味もないかどうかはわかりません。しかし,現在分かっている健康影響より大きいことはありません。実は,環境ホルモンについては,この常識を覆すような仮説が唱えられた為,大騒ぎになりました。微量の方が大きな影響があるのなら,極めて対応が困難になります。

 ゼロに出来れば良いのですが,現実には不可能です。そうすると下手に量を減らすよりも一番影響の少なそうなところを維持する必要がありますが,これってもの凄く大変なことです。減らしすぎず,増やしすぎず微妙な調整をし続けなければなりませんから,綱渡りのバランスが要求されます。低線量の影響を気にする人は環境ホルモンのような状況を想像されているような気がします。

 放射線も自然放射線や人体そのものからも出ていますから,ゼロには出来ません。となると減らしすぎないように気をつけなければならないことになります。でも,環境ホルモンも否定されたように低線量の方が影響が大きいという可能性はないでしょう。もしそのようなことがあるのなら,低線量を浴びるという事態は結構ありますから,既に影響が観測されているはずです。

 以上のことから,低線量の健康影響があったとしても,LNT仮説のような場合であって,それならば,現在の福島県放射線量程度なら神経質になることも有りません。それは図を見れば分かるように,低線量の影響が有ったとしても,低線量なりの影響で,それは自然の地域差に埋もれてしまうようなものだからです。