知らぬが仏 − 安全と安心

水銀、「たまり水」気化が原因か…豊洲問題会議
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161112-OYT1T50132.html?from=ytop_main3
 今年9月末に地下空間の大気から検出された国の指針値の最大7倍となる水銀について、同会議は、地下水の上昇による「たまり水」から気化した可能性が高いと結論付けた。来月の次回会議までに地下空間の換気をし、濃度の変化を確認するという。

 同会議の報告によると、地下空間のたまり水からは、これまで水銀が検出されていなかったが、精密な検査の結果、通常の地下水と同程度のごく微量な水銀が検出された。

  一方、大気中の水銀濃度は、今月上旬には最大2倍程度まで低下。同会議は、たまり水から気化した水銀が密閉されている地下空間で濃縮され、その後、人の出入りなどで換気された結果、濃度が下がった可能性が高いと指摘した。

 水銀の出所はミステリーでした。最も怪しい犯人であるたまり水からは検出されておらず,地下空間の空気中の水銀がなにに由来するのかは大きな謎でした。

 ところが,犯人はやはりたまり水だったという拍子抜けの結論です。しかも「通常の地下水と同程度のごく微量な水銀」というオマケつきです。つまり,地下水が露出し,なおかつ密閉した地下空間ならどこで検出されるような量の水銀だったということのようです。

 もともと,ごく微量で心配するような量ではないと専門家委員会の座長も強調していましたが,換気の悪い地下空間は,他に心配しないといけない危ないものが溜まりやすく要注意です。地下の工事では,酸欠事故や有毒ガス中毒事故が時々起こります。別の記事にも書きましたが,京葉地区天然ガスの事故も発生しています。また,一般的に,地下はラドン濃度が高くなり,健康への影響が無視できない場合があります。

 水銀やベンゼンよりも危険なものが地下空間にはいろいろ溜まっていそうな気がしますが,だれも気にしません。それは測定していないだけですが,空間ではなくて,盛土の土が詰まっていても同様かそれ以上に「危険」でしょう。なぜなら危険なものの発生源は土壌や地下水だからです。土壌には地下水が浸透します。空間であれば,それらの危険なものを容易に検出できるというだけなのですけどね。

 それに,盛土の中に人間は入っていけませんが,空間なら可能ですので,危険をイメージしやすいのだと思います。通常は人も食品も入っていかない空間でもイメージ形成には効果的です。

 ごく微量と言われても,検出されれば気になるのが人間です。専門家以外は定量的評価が苦手で,有るか無いかでしか判断しませんからね,逆にモニタリング空間なんかないほうが,知らぬが仏で安心はできるのかもしれません。豊洲市場の話題は「安全」ではなくて「安心」のようですから。