組体操は、体育教育の授業か

小倉智昭氏が体育祭での人間ピラミッド事故の「リスク」に持論 
http://news.livedoor.com/article/detail/10662481/

そして、小倉氏から「組み体操で、小学生や中学生が年間どれくらいケガをするとかって、数は出てんの?」との質問を受けると森本アナは、組み体操の事故が年間6000件、跳び箱が15000件以上と説明し、スタジオのモニターにも2013年度の「全国の小学校でのスポーツ事故件数」のグラフを表示した。

これに対し、小倉氏は「ね?だから突出して(組み体操の事故が)多いわけじゃないんだよ、全然」と指摘した。

 小倉氏は組体操と跳び箱を比べていますが、組体操は体育の授業で習う種目というよりも、体育祭という行事の演目という面が強いのではないでしょうか。例えば会津教育事務所の資料には跳び箱は器械体操の1種目として授業時間配分表にも入っていますが組体操は見当たりません。

http://www.aizu-eo.fks.ed.jp/111101sidou/taiiku/120117/jisu.pdf

 また、跳び箱は男女全生徒が行いますが、人間ピラミッドは男子のさらに一部の生徒しか行いません。そもそも、行っている時間や人数がまるで違うので、事故の件数だけではリスクは分かりません。事故件数ではなく、事故率を比較する必要があります。さらに、事故の重大さも考慮すべきで、打撲と死亡事故を同じ1件とみることはできません。

 以上のリスクの把握の間違いに加えて、小倉氏の考え方ではリスク管理を放棄することになります。スポーツにはリスクが伴いますので、ゼロリスクを求めればスポーツが出来なくなるのは小倉氏の言う通りですが、だからといってリスクがいくらあってもよいことにはなりません。スポーツには体力や健康向上などのメリットがあり、それがリスクを上回るから行なうわけです。跳び箱の練習をしなければ、練習による怪我は防げますが、運動能力が発達せずに将来もっと大きな怪我をするかもしれません。

 では、組体操のメリットは何かと考えるとよくわかりません。確かに、体力やバランス感覚の向上になるかもしれませんが、それらなら他の体育の種目でもっと低リスクで効率的に身に着けられます。組体操は体育の授業というよりも観客に見せる行事の出し物です。出し物の目的は、観客に受けることです。何か危険の伴う難しいことを達成すれば感動的な演目となります。つまり、子供の教育のための手段として組体操を使っているのではなく、感動的な演出のための手段として子供を使っているのじゃないかと。しかも、そのような感動を経験させることが教育だと思っているフシがあります。心身を鍛えるという体育の授業からはかけ離れて、観客に感動を与える役者の教育をしているんじゃないでしょうか。高校野球に通じるものがあります。