<小保方博士論文>「不正あったが学位取消に該当せず」早大調査委・配布資料(全文)
http://www.bengo4.com/topics/1805/
早稲田はコピペしても「博士号」が取れる?小保方さんが「学位取消」にあたらない理由
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140717-00001809-bengocom-soci
報告書を要約すれば,以下の通りになるかと思います。
0. 本件博士論文(完成版では無い)で博士学位が授与されることは到底考えられない。授与されたのは審査体制に欠陥・不備があったからである。
1. 「不正の方法」により学位の授与を受けた事実が判明したときは,学位を取り消す。
2. 著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたるが,過失なら「不正の方法」ではない。
3. 2.の判断基準によれば,「不正の方法」は6箇所ある。
4. しかし,「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)がなかったと判断し,学位は取り消さない。
5. 転載元を表示せずに他人作成の文書を自己が作成した文書のようにして利用する行為は、研究に携わる者が作成する論文等において、決して許されない。
一見して,1.〜4.と0.や5.に齟齬があるように思えますが,0.や5.は論文の内容や学位を与えるまでのことについて述べています。それに対して1.〜4.は既に与えられた学位の取り消しについてであり,異なる時点を述べています。つまり,到底,学位を与えられないような内容の論文であっても,一旦与えてしまった学位取り消しの十分条件ではないと述べていることになります。(授与と取り消しは判断基準が違うという理論で切り抜けようとしたように読めます。)
取り消しできるのは,「不正の方法」(これは6箇所あった)と「学位の授与」との間に因果関係がある場合です。今回は因果関係がないと判断されました。つまり,「到底学位を与えられないような論文」であることは,「学位の授与」と因果関係がないと言うことになります。言い換えれば,「到底学位を与えられないような論文」でも学位を与えられるということです。これは実に奇妙ですが,多分,序文にコピペがあっても,重要ではないから「学位の授与と因果関係はないと言いたいのかも知れません。しかし,そうであるならば,0.や5.と矛盾します。授与との因果関係上重要でないコピペなら,到底学位を与えられないような論文とは言えませんから。(一旦,授与と取り消しの分離を図ったのですが,授与時点の「因果関係」が取り消しの判断でもあるとしたため,再び,授与と取り消しは同じ判断になってしまいました。)
もう一点興味深い箇所があります。「不正の方法」の判断は,現存している草稿レベルの「本件博士論文」を吟味して行うのではなく,「完成版論文」で行うと読める点です。ただし,小保方氏は「完成版論文」として「ある論文」を提示しましたが,最終的な博士論文として真に提出しようとしていた博士論文と全く同一であるとの認定をするには、証拠が足りないと委員会は判断しています。つまり,存在せず,どんなものか不明の「完成版論文」を吟味して,「不正の方法」はなかったと判断したということです。
委員長は次の様に述べています。
「学位の取り消しは一つの法律行為なので、その要件に合致しなければ、たとえ心情的にはおかしいと思っても、取り消すことができない性質がある」
つまり,誰が見たって変だと感じる報告かもしれないけど,法律行為として形式的,杓子定規に規定を適用すれは取り消しできないと仰るわけです。これは法律行為としての規定がその主旨から外れていると言うことに他なりません。しかし,形式的な判断としても変じゃないでしょうか。
【追記 0720】
早稲田大学HPの報告書全文も見ました。
学位はアカデミズムアの称号であって、国家資格でもなんでもないのですから、法律行為がどうのこうのなんて気にしなくてよいと思うんですけど、生活への配慮だとか大人の事情なんですかね。でも、法律行為そのものである国家資格は生活への配慮なんて一切せずに剥奪されます。
しかし仮に、構造計算書偽装事件の姉歯建築士の生活を配慮して、建築士資格を取り消さなかったとしても、彼に仕事を頼む顧客はいそうになく生活への配慮にはなりません。一方、学位の場合は「到底、授与に値しない」ものであっても、仕事が出来るということになるね。つまりディプロマミルの学位。