「所得が少なく税率の低い貧しいものほど、増税の余地がある」

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 岸田首相による防衛費増税の議論を見ていても、政府や財務省内には「日本にはまだまだ増税できる余地がある」「日本の国民負担は諸外国と比べて低い」という、虚偽のイメージを持っていることが分かる。

 財務省の「国民負担率の国際比較」という資料によれば、実際には、日本人の潜在的国民負担率(将来世代の負担である財政赤字を含む)は22年度(見通し)で56.9%になっている。これは、米国、英国、ドイツをはじめとする先進諸国より高く、福祉国家として知られる北欧のスウェーデンをも上回る数字だ(海外はいずれも19年実績ベース)。日本は、現時点で世界トップクラスの国民負担を背負い込んでいる。

 岸田首相の発言は、「所得が少なく税率の低い貧しいものほど、増税の余地がある。」というとんでもない暴論ですね。

 ただし、首相の言う「国民負担」が記事にある「国民負担率」ならばです。「国民負担率」とは、次の式で表せます。

   国民負担率=(租税負担+社会保障負担)÷国民所得

 これは、個人で言うならば、「税負担÷所得」という税率に相当します。累進課税の元では、所得が少ない貧しいものほど税率は低いですから、冒頭に述べた暴論ということになります。

 記事では、この率を示して日本は世界トップクラスの国民負担であり、「日本には増税余地がある」は 虚偽のイメージだと述べています。結局、自分自身も暴論を言っています。

 では、首相のいう「国民負担」とは何でしょうか。おそらく、政府支出に占める税収の割合ではないでしょうか。財務省は財政黒字を目指していますので、これが100%未満なら余地があるということになります。税金のみを国民の負担と考えているわけです。

 しかし、外国からの借金や支援(日本はマイナス)を除けば、政府支出は全部、国民の負担でしょう。国債も国民から借りているので国民の負担です。日本のような国で国民負担が多いとか少ないということ自体が無意味でしょう。

 税が政府支出の財源であるというウソを信じていれば、財政赤字分は国民以外の誰かから借金していることになりますが、そんな誰かはどこにも存在しません。日本は外国から借金どころが、貸しているのですからね