ドゥ・メレの掛け金配分問題と眠り姫問題

 先ず、問題です。それほど難しくはありません。

AとBが3回勝負のジャンケンをしました。2回勝ったほうが掛け金300円を取り、そこでゲームは終了します。ところが、1回戦でAが勝ったところで、急用のため勝負を中断しました。そこで、300円を配分することになりました。次のAとBの主張のどちらが正しいでしょうか。

 

Aの主張:勝負を続けた場合の可能性は、次の4通りだ。

  • 2回戦と3回戦で俺Aが勝つ場合(AA)
  • 2回戦で俺Aが、3回戦でお前B勝つ場合(AB)
  • 2回戦でお前Bが、3回戦で俺Aが勝場合(BA)
  • 2回戦と3回戦でお前Aが勝つ場合(BB)

そのうち俺が賞金を得るのは、(BB)以外の3通りだから、3/4の225円を俺がもらう。

Bの主張:いや、2回戦でお前Aが勝った時点でゲームは終わりなので、(AA)と(AB)はダブルカウントだ。可能性は、次の3通りだ。

  • 2回戦でお前Aが勝つ場合(A)
  • 2回戦で俺Bが勝ち、3回戦でお前Aが勝つ場合(BA)
  • 2回戦と3回戦で俺Bが勝つ場合(BB)

お前が賞金を得るのは、そのうちの2通りだから、お前の取り分は、2/3の200円だ。

 正解はAです。なぜなら、Bの主張する3つの可能性の蓋然性は同じではないからです。つまり、(A)の確率は1/2ですが、(BA)と(BB)の確率は1/4です。従って、Aが賞金を得る確率は、(1/2+1/4)÷(1/2+1/4+1/4)=3/4 となり、Aの主張と同じになります。

 

 ここで、ルールを少し変えて別の問題にします。ジャンケンは3回戦まで必ず行うこととし、3連勝すると、快眠効果のあるヤクルト1000がもらえます。では、ヤクルト1000がもらえない場合に2回戦でAが勝っていた確率は如何ほどでしょうか。

 

 もうお分かりだと思いますが、これは「眠り姫問題」と同型の問題です。目覚めがヤクルト1000ゲット失敗に、睡眠がヤクルト1000ゲット成功に、月曜が3回戦でAが負け、火曜が3回戦でAが勝ちに、コイン表が2回戦A勝ちに、コイン裏が2回戦A負けに対応しています。次のそれぞれの八分表を比較すればわかります。

 眠り姫問題には、「裏で火曜日」を無視させるトリックがあります。裏が出たのは日曜日の1回であって、それを月曜日と火曜日の2回数えるのはダブルカウントのように思えてしまいます。これは、冒頭のジャンケン問題でのBの主張と類似の錯覚です。

 

 また、眠り姫問題では、表の確率は日曜日に投げた時の事前確率と変わらないような気がしますが、これは、3回戦まで行うジャンケン問題を、単に「2回戦でAが勝っていた確率は如何」と錯覚するのと類似しています。眠り姫問題には、「目覚め」という条件がありますし、ジャンケン問題には「ヤクルト1000ゲット失敗」という条件があります。実際には「ヤクルト1000ゲット失敗」条件は目立つので、錯覚することはないと思いますが、「目覚め」条件は無視されやすいので、錯覚するんですね。私も錯覚しました。